研究課題
本研究は、太陽活動の変調を受けない100 GeVを超える高エネルギー宇宙線ミューオンが地下深部の岩石中に生成する宇宙線生成核種Al-26,Be-10を加速器質量分析法(AMS)により測定して、300万年前の高エネルギー宇宙線イベントおよび宇宙線強度変動を探索することを目的としている。・最終年度は、深度50 mにおける土岐花崗岩ボーリングコア試料中のBe-10のAMS分析を行った。地下50 mでの宇宙線ミューオン強度から期待される石英中のBe-10生成量を測定するために、約3kgの花崗岩試料を処理して石英を抽出した。石英抽出の第一段階において重液(ポリタングステン酸ナトリウム)分離を導入しているが、2回の重液分離を行うことにより抽出物中の石英純度を約80%まで向上させることができた。また、AMS測定試料作成において抽出石英のフッ酸処理により高純度石英の精製を行っているが、XRF分析により、含有金属元素(チタン)濃度は、10 ppm以下であることが確かめられた。・本研究により、すでに、深度約5mと20mの土岐花崗岩試料から抽出した石英中のBe-10濃度が測定できている。最終年度に深度50 mでのBe-10濃度の測定ができ、3点の深度データが得られた。本研究により、1 g石英中のBe-10が1000個程度の極微量まで10%の誤差で測定できることが分かった。国際的に見てもこの深度の先行研究は、2例程度しかなく、且つ単一ボーリングコア試料に対する結果は唯一のものである。本研究の結果は、深度が20 mより深いところで、先行研究データより約20%程度低い値を示している。現代の高エネルギー宇宙線ミューオン強度から推定されるBe-10濃度に比べ高エネルギー側で低い可能性が示唆される。
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Nuclear Inst. and Methods in Physics Research B
巻: 439 ページ: 94-99
10.1016/j.nimb.2018.11.004
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.nimb.2019.01.026