研究実績の概要 |
(1)核子当りの実験室系での運動エネルギーが5TeVまで、以下の入射核種と標的核種の組み合わせで発生するガンマ、ミューオン、電子、ニュートリノのスペクトルを、奈良のJAM-1.342コードで計算し、実験・観測結果と照合した。入射核種:p, He, C, N, O, Ne, Mg, Si, Fe 標的核種:H, He, C, N (2)ガンマ線スペクトルを、中性パイ、イータ、その他経由に分けて予言。(2015年9月にトリノで開かれたFermiLATグループ会合で発表:非公開) (3)反応はバリオン共鳴とLundストリングで近似し、他モデルと比較した。 (4)フェルミ宇宙ガンマ線望遠鏡(FermiLAT)が観測した、宇宙線が大気上層部で起こす相互作用で生まれるガンマ線スペクトルを、計算で再現したその結果、FermiLATの衛星軌道の高度により、ガンマ線到来方向分布が変動することを発見し、補正方法を提案した。(2016年3月にSLACで開かれたFermiLATグループ会合で発表:非公開) (5)計算結果にミューオンや、その崩壊で発生する電子・陽電子とニュートリノを追跡プログラムに追加した。その結果、ミューオンが、大気上部をほぼ水平に数1000km程度まで飛んだ後に崩壊する事象があることが判明した。このことは、FermiLATの電子・陽電子の宇宙線スペクトルに、ミューオン経由のものが混ざっている可能性を示唆する。(FermiLATの会合で発表:非公開。 (6)JAMに量子分子動力学(quantum molecular dynamics)の枠組みを用いて、核子の平均場を取り入れた。この改良により、核子当たりの入射エネルギーが20GeV(ラボ系)までの原子核反応の記述が改善された。また、平均場により、核子間が結合する効果が入るので、反応で生成されるハドロンだけでなく、原子核クラスターも含まれるが、その励起状態の崩壊も行えるようにした。 (7)平均場を導入すると計算時間が10倍必要となるので、ビデオカードを追加しGPUとして高速化した。JAMの一部をGPU用のCuda言語で書き換えることで、10倍速く計算できるようにした。
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