当年度に申請者はLHCf 実験グループとして衝突エネルギー(√s) 13TeV での陽子-陽子衝突データを取得し、データを解析中である。 既存のハドロン相互作用モデル(QGSJET-II-04)を変更して √s=7TeVでの LHCf 実験データのうち、最前方に放出される中性子のエネルギー流量を再現した。相互作用で生じた事象を Diffraction の種類で分け、事象の種類ごとの比率を変更しながら多数のシミュレーションを行い、最適な条件を探索した。その結果、中性子および中性パイオンのエネルギー総量がLHCf実験から予想されるエネルギー総量とよく一致するようなモデルを作成することができた。 さらにこの修正モデルを空気シャワーシミュレーションに適用したところ、シャワー二次粒子中の電子数は5%減少する一方で地表に到達する電子数は16%増加した。これはテレスコープアレイ実験が報告している大気蛍光望遠鏡と地表粒子検出器のエネルギースケール不一致を解決する方向である。しかし今回のモデル修正では増加した電子はほとんどシャワー中心に集中しており、実験の結果を再現しなかった。また、シャワー二次粒子中のミューオン数は14%増加し、地表でのミューオン数も16%増加した。これはAuger実験が報告しているミューオン過剰を説明する方向ではあるが、完全に説明するには増加数が足りなかった。また、宇宙線中のハドロン成分解析の為の地表検出器データ解析ツールを作成した。現在シミュレーションを用いた評価基準作りを行っている。 今後はさらに中性子のエネルギー分布やエネルギー流量のラピディティ分布の測定結果の再現を目指す。申請者の予備研究から、これらもシャワー二次粒子の横方向分布や、粒子数増加に10%レベルの影響を及ぼすことがわかっている。引き続き空気シャワー実験の観測結果再現を目指して研究を推進していく。
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