データ収集した200A (Aは質量数) MeVの不安定核錫132の固体水素からの弾性散乱のデーター解析を行った。200A MeVの錫132ビームでの測定の際にはビームライン上に設置していたプラスチックシンチレーターがビームのために損傷し30分ごとに照射位置を変更せざるを得なかった。300A MeVのビームではこの状況がさらに悪化することが予想される。その対策として新たに高圧キセノンガスシンチの開発を東北大RIセンターと放医研のビームを用いて実際の測定の際と同し粒子エネルギーすなわち300MeVx132=39.6GeVで行い、飛行粒子弁別能力はSi-半導体検出器を上回り、時間応答もピコ秒のオーダーであることが判明した。既存のどの検出器より良い性能であることが確認できたので、不安定核ビームラインを担当しているグループと共同でXe-gasシンチレーターを理研ビームラインに300A MeV の測定前に導入することを検討している。 「Proton elastic scattering from stable and unstable nuclei -- Extraction of nuclear densities」というレビュー論文をElsevier出版社のProgress in Particle and Nuclear Physicsで出版し、我々の科研費に関連した一連の成果をまとめて公表した。その中でΖr90の我々の測定と解析から200MeVと300MeVの陽子弾性散乱を解析することで原子核内の陽子と中性子の密度分布を独立に抽出できることを示し、抽出した陽子分布は実験誤差の範囲内で電子散乱から得られたものと一致することを示した。これは事実上電荷分布が測定できていない不安定核では画期的な意味を持ってくる。我々の今後の300A MeVの測定と合わせた錫132の解析が期待される。
|