研究課題/領域番号 |
15K05108
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
塩見 昌司 日本大学, 生産工学部, 准教授 (60401288)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水チェレンコフ光検出器 / GEANT4 |
研究実績の概要 |
銀河系内において宇宙線加速限界付近で生成されるであろう 100 TeV 領域のガンマ線の観測は、宇宙線の起源・加速機構の謎を解く重要な鍵となるが、これまでその頻度の低さ故に、未観測である。 チベット空気シャワー観測装置 (Tibet-III) は、標高 4,300 m の羊八井高原に約 800 台のシンチレーション検出器を配置した有効面積約 40,000 m2 の数 TeV - 数 100 TeV ガンマ線観測装置である。100 TeV 宇宙線に対し、エネルギー分解能 70~150 TeV・角度分解能 0.2 度の性能を有する。2014年より Tibet-III の装置の内側に土洩 2.5 m、水深1.5 m の水チェレンコフ光観測型ミューオン検出器群 (MD) を設置し、両装置を連動した実験が行われており、順調にデータを取得中である。MD 増設によりガンマ線観測のノイズとなるハドロン宇宙線が 99 % 以上除去可能となり、数 10 TeV 領域以上のガンマ線検出感度が 1 桁以上向上するため、数 100 TeV ガンマ線を世界で初めて観測できると考えている。 次のステップとして、さらなる角度分解能の向上は、ガンマ線検出感度の向上はもとより、定常的、フレア的ガンマ線天体の加速限界や陽子加速現場の同定等に大変重要である。そこで、より安価な装置の可能性を探るため、地表上に水チェレンコフ光検出器 (WP) を新たに設置し連動させることを検討している。 現在、実証実験の準備とシミュレーションコードを作成中であり、実証実験では、予定していた 2.0 m の深さのプールを、多様な実験ができるようにより深いタイプの装置が可能か検討している。シミュレーションは GEANT4 による水チェレンコフ光検出器の性能を簡易地表水プールでシミュレーションし、データを溜め始めた所である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シミュレーションに関しては、水チェレンコフ光検出器として単体の簡易型の装置が GEANT4 により作成出来たところである。空気シャワーシミュレーションイベントは既存のものを用い、進めていく。現在まだ成果として簡易型装置の性能をまとめる前の段階であるが、これは他の業務を優先したためであり、やや遅れ気味ではあるが、特に計画に支障をきたす問題はない。 実証実験に関しては、装置本体は、想定していた水厚さ 1.5 m の水チェレンコフ光検出器で十分小空気シャワーの検出が可能と考えているが、水深の違いによるバックグラウンドのミューオンに対する除去率がどう変わるかについても検討可能な装置の製作も検討しているため、遅れ気味となっているが、1年目の準備としては、概ね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションに関しては、現在の簡易型の装置の性能を理解し、まとめる。 より正確なシミュレーションに向け、光子の時間情報を元に、アレイにした場合の到来方向決定精度に関する研究を行っていく。 実証実験に関しては、装置本体の形状を予算含め実現可能な範囲で決定後、シミュレーションデータと比較可能なデータを取得する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実証実験用の装置として、予定していた装置が円安の影響で購入が厳しくなったため、 形状サイズを縮小し対応するか、来年度予算と合算し作成するかの選択が生まれた事と、装置形状、特に水深をより深くする事が、さらなる装置性能向上の可能性が出てきたため、本年度予算+次年度予算により選択幅が生まれると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度中にシミュレーションも参考にし、装置の深さ(高さ)を決定後、見合った装置が作成可能であれば深いものを、難しいようであれば、初期の想定内の深さのものを購入する予定である(概算見積もり済)。
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