研究課題/領域番号 |
15K05108
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
塩見 昌司 日本大学, 生産工学部, 准教授 (60401288)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高エネルギーガンマ線 / 水チェレンコフ光検出器 |
研究実績の概要 |
シミュレーションにより、直径 8m 高さ 2.5m の円筒型貯水槽に、13本 の光電子増倍管(PMT)を 2m 間隔に配置した水チェレンコフ光検出器装置(WCD)を標高4740m において再現し、まず水深の違いによる検出感度や信号の時間情報の変化について評価した。その結果、天頂からの宇宙線に対してのWCDの光子検出効率は、水深が 1.5~2.0m 程度がよく、使用する PMT の総受光面積に比例すること、同受光面積ではPMT数が多い程、コインシデンスしやすいといった予想通りの結果が得られた。(国際会議 ICRC2017にてポスター発表) 次に、シンチレーション検出器と WCDs を連動させたシミュレーションを行い、到来方向決定精度を WCDs がある場合と無い場合で比較した。まだ方向決定アルゴリズムの最適化はされていない状態だが、天頂からの 3 TeV、10 TeVガンマ線に対して、天頂入射のみだが角度分解能が約 1.7 倍向上することがわかった。残念ながら、主目的の 100TeV ガンマ線では、角度分解能の向上がみられなかった。今後、エネルギー毎に方向決定のアルゴリズムを最適化し、天頂角方向以外の方向決定結果も評価していく。(2018年春の日本物理学会にて発表)
実証実験に関しては、貯水槽の設置が完了した。これから防水バッグを入れ、実現可能性を確認する状況である。 プロトタイプとしてコルゲート水槽を用いた場合、直径 3m 高さ 2.5m の水槽は 210 万円で作成可能であることがわかった。これらから、本実験用として直径 8m 高さ 2.5m の水槽に光電子増倍管 13 個設置する場合、36 台でおよそ3.9 億円ほどと、空気シャワー検出器のみで角度決定精度を2倍に上げるために必要な予算の65%の予算で同様の角度分解能を実現できる可能生があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学業務や本研究外の研究業務の増加、親の介護等による主担当のエフォートの低下と、発注予定の水バッグの設計に時間がかかり、かつ水バッグの一部品の納品に時間がかかった等で、全体の計画がずれ込んだ。 実験のシミュレーションに関しては、担当者にグループ会議やインターネット会議で進捗報告をしてもらい、議論しつつ進めている。担当者も他の用務で進みは遅いが、着実に進んでおり、学会発表も国内、海外にて発表できた。 実証実験用の装置の作成について本体については設置済みであり、中に入れる水バッグは4月に入ってからであるが、設置し終え、これから各種テストを行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
エフォートの増加は難しいが、実験補助を増やしたことや、水槽が完成したので、後はこれまでの手法をベースに時間を作って着実に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度で全て購入予定だった装置の一部の設計に時間がかかった。さらに、装置部品製作業者側の事情で、正式な発注が来てから初めて必要部品の取り寄せをすることが急遽わかり、一部の物品は発注から納品まで1ヶ月かかることがわかり、年度を超えることになった。 次年度使用額はほぼその部品の購入で無くなり、又、装置はこれで完成する予定である。
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