研究課題
2001年に日本で発見されたニホウ化マグネシウム超伝導体は、原料コストが安価で、線材として加工が容易なため、電磁石への応用が試みられている。課題としては(1)電流密度を実用化超伝導材(ニオブチタン)並みに高めること、(2)電磁石製作工程での超伝導特性劣化(臨界電流値の低下)を克服することが挙げられており、本研究は(2)に関して行った。メートル級のサイズとなる検出器用超伝導磁石用の線材(ケーブル)は臨界電流100A(アンペア)程度の導体を撚合わせて臨界電流数1000A級とする必要があるが、このケーブル化での劣化が、電磁石製作工程の中で一番大きいと考えて、ケーブル試作とあわせて調査試験を行った。市販されている熱処理前のニホウ化マグネシウム導体(ハイパーテック社製30-NMや24-NM)を購入し、電磁石用ケーブル作成時に加わる曲げや凹み変形を人工的に加え、ニホウ化マグネシウム生成熱処理の後に臨界電流を測定した。熱処理前の曲げ歪としては約3 %、凹み変形としては約8 %を超えると著しく低下することが分かった。低下の背景となる線材内部構造の変化をX線CT装置や電子プローブ微小分析を用いて観察した。臨界電流が低下した個所では、熱処理時に材料のマグネシウムがホウ素と反応せず、これらを囲っているニオブ壁の破れを通じて、周囲の銅(モネル銅合金)と反応していることが判明した。調査試験と並行して、10-12本の導体を撚ったケーブルを試作し、コイル巻線をした。ケーブル工程では、巻線に影響のない範囲でケーブル寸法精度を緩めたが、50~70 %程度まで導体1本あたりの臨界電流値は劣化した。一方そのケーブルを用いたコイル巻線工程での著しい劣化は確認されなかった。ケーブル加工時の劣化抑制には、ニオブ壁を強化し銅とマグネシウムの反応を抑える導体内部の改良が必要と考えている。
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IEEE Transactions on Applied Superconductivity ( Early Access )
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1109/TASC.2019.2911309
IEEE Transactions on Applied Superconductivity
巻: 28 - 3 ページ: 5700604
10.1109/TASC.2018.2797908