ニュートリノの質量が非常に軽い理由はシーソー機構理論で説明されている。この理論ではニュートリノが物質と反物質の区別が無いというマヨラナ性を持つ粒子であると仮定されている。そして、この理論に基づくレプトジェネシス理論によれば、宇宙が物質に満たされていて反物質が無い理由が説明できるので、マヨラナ・ニュートリノは宇宙の起源を説明する鍵を握る粒子として注目されている。ニュートリノがマヨラナ性を持つなら、原子核が二重ベータ崩壊する際にニュートリノ放出を伴わない事象(ここでは0n2bと略記)が生ずることが理論上予言されている。我々は0n2bを実験的に確認するために崩壊で放出される2本のベータ線の個々の運動量を測定する装置を開発している。ベータ線が一様磁場中で描く特定半径の螺旋飛跡のみを捉えるので、他の粒子(光子、アルファ粒子等)が背景事象として混入しない。将来的には大量の崩壊核(1000モル程度)を必要とするが、プロトタイプとしてDrift Chamber Beta-ray Analyzer (DCBA)を開発・運転し、現在は得られたデータを使用して解析に必要な技術開発を続けている。将来の大型実験装置Magnetic Tracking Detector (MTD)の建設には大型化特有の技術が必要である。飛跡検出部には大量のワイヤーを張る必要が有る。特に(1)ワイヤーを支える支持枠の形状や枠の固定方法等機械的問題点、(2)それらのワイヤーに誘起されるベータ線の大量の位置情報収集と高速情報処理等電気的問題点に着目して本研究を行ってきた。かなりの部分については解決策を見出したが、改良の余地も有るので今後も技術開発を継続する予定である。
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