研究課題
本研究の目的は、高品位な水素終端Si(110)-(1×1)[H:Si(110)]表面を用い、その表面及びバルク構造に由来する電子状態とフォノンとを明らかにすることにある。加えて、D:Si(110)表面、H:Si(110)微斜面やH:Si(111)表面を含め、表面の物性研究やデバイスへの応用を目指した基礎研究も行う。本年度は、本申請の最終年度として、昨年度までの成果を基に、角度分解光電子分光法による実験と第一原理計算により明らかとなったSi(110)面の電子状態の論文を公表した。査読者との応答の過程で、第一原理計算で用いたスラブの厚さ依存性の再計算も行った。また、以下の成果を論文2編、学会発表13件(内国際会議3件)として公表した。(1)高分解能電子エネルギー損失分光法を用い、D:Si(110)表面の表面フォノン分散を実験的に決定し、第一原理計算により得られた表面フォノン分散と比較し、Γ-Χ方向に伝播する1次元フォンの存在を明らかにした。さらに、第一原理計算の精度に関しても議論した。また、H:Si(110)表面の結果とも比較検討した。(2)H:Si(110)平坦面、及び微斜面のエッチング過程を原子間力顕微鏡、及び走査トンネル顕微鏡で観察し、1次元フォノンの伝搬方向に延びる1次元構造を観察した。その時間発展が、Kuramoto-Sivashinsky方程式に従うことを明らかにした。 (3) Si(110)面の電子状態の公表論文の成果を検証するために、走査トンネル顕微鏡およびトンネル分光法を用いて、H:Si(110)表面の原子配列及びトンネル電流のバイアス電圧依存性を観察した。(4) H:Si(111)表面にAg原子を蒸着し、Agクラスター成長過程の蒸着速度依存性を観測した。その結果、遅い速度で蒸着した場合、高さ方向に量子サイズ効果が発現することを発見し、論文として公表した。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件)
Journal of Applied Physics
巻: 122 ページ: 095303-1~7
10.1063/1.5000699
Physical Review B
巻: 96 ページ: 125302-1~9
10.1103/PhysRevB.96.125302