研究課題/領域番号 |
15K05123
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
左右田 稔 東京大学, 物性研究所, 助教 (40463905)
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研究分担者 |
益田 隆嗣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90313014)
浅井 晋一郎 東京大学, 物性研究所, 研究員 (00748410)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マルチフェロイクス / リラクサー磁性体 / スピン・ネマティック / 電気磁気効果 |
研究実績の概要 |
磁性と誘電性の新奇関係に注目し、マルチフェロイクスBa2CoGe2O7、磁性イオンをもつリラクサー誘電体(リラクサー磁性体)LuFeCoO4の研究を行った。 リラクサー誘電性は、polar nanoregion (PNR)と呼ばれる自発分極を持ちながらランダムな方向を向いた局所領域を考えることによって説明されている。我々は、リラクサー磁性体LuFeCoO4に注目し、誘電性と磁性の新たな関係を探索した。LuFeCoO4単結晶に対する中性子散乱実験を行ったところ、PNR起源の異方的核散漫散乱が観測された。一方磁性に関しては、短距離磁気秩序を表す幅広い磁気反射が観測される。c軸方向の磁気相関はほとんど無いが、面内方向の磁気秩序は、温度下降に伴い徐々に成長し、それに伴い核散漫散乱も減少する。さらに、核散漫散乱から見積もられるPNRサイズと磁気相関長が密接に関係している。中性子散乱実験の結果は、磁気転移温度付近においてPNR起源のナノ磁気ドメインが存在していることを示しており、磁化測定で観測されている超常磁性の起源もPNRだと考えられる。 二次元反強磁性体Ba2CoGe2O7は、磁場下においてab面内のcollinear反強磁性秩序とc軸方向の自発的誘電分極が同時に出現するマルチフェロイック物質である。磁性を担うCoO4四面体に反転中心が存在しないことから、Coサイトのスピン四極子は電気分極と等価となる。また、Coイオンの局所的及び非局所的対称性の考察から、ab面内の磁気異方性の最低次は、スピン四極子間の相互作用であることが導かれる。我々は、スピン四極子相互作用を通した電気磁気効果を明らかにするため、Ba2CoGe2O7のc軸方向に電場印加し電場中偏極中性子実験を行った。その結果、電場印加によって磁気モーメントがc面内で回転することを発見した。この変化は、基底状態であるS//<100>の反強誘電状態から励起状態であるS//<110>の強誘電状態に移り変わっていることを意味しており、新規な電気磁気効果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マルチフェロイクスBa2CoGe2O7の電場中非弾性中性子散乱実験をオークリッジのSNSにあるCNCSで行ったが、SNSの試料環境の問題によって、当初予定していた高電場をかけることができなかった。そのため、データが不十分なものになってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
すでにマルチフェロイクスCa2CoSi2O7の中性子弾性散乱実験、類似物質Ba2CoSi2O7の中性子弾性散乱実験・中性子非弾性散乱実験、リラクサー磁性体LuFeCoO4の中性子非弾性散乱実験を行っており、解析を進めるとともに、論文にまとめていく。また、今までの実験結果をもとに新奇電気磁気効果の可能性を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
達成度の項目で書いたように電圧印加の実験に遅れが生じたため、高電圧電源購入が遅れ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り高電圧電源を購入する予定である。
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