研究課題/領域番号 |
15K05124
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 岳生 東京大学, 物性研究所, 准教授 (80332956)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メゾスコピック系 / 非平衡統計力学 / 物性理論 / 量子ドット / 光物性 |
研究実績の概要 |
以下の4つの研究を推し進めた。(1)熱浴の温度・化学ポテンシャルを周期的に変化させたときに量子ドットを流れるポンプ電流を、ハートリー近似の範囲で評価した。量子ドット内に電子間相互作用があるときにのみ電流が生じることを明らかにし、ポンプ電流は熱浴の変化に量子ドットの有効準位の応答の遅れによって生じることを示した。この成果は原著論文として出版された。さらに電子間相互作用の大きさをもっと大きくした場合についても一般論を整備し、近藤効果についても取り扱うことのできる定式化を行った。現在、近藤効果の影響の詳細について、量子モンテカルロ法による計算を行っているところである。(2) 2準位系を介したフォノンの熱輸送について、量子モンテカルロ法・解析手法の両面から解析を行った。特にこれまで研究が行われていなかった、熱浴が非オーミック的な性質を有する場合のフォノン輸送を詳細に調べ、各パラメータ領域で特徴的な輸送プロセスを同定した。この研究は計算はすでに終了しており、現在論文を執筆中である。(3)新しく相互作用する一次元系における不純物効果の研究を立ち上げた。これは有限の空間的な大きさを持つ不純物を朝永-ラッティンジャー流体中にいれたときの伝導特性をしらべる研究プロジェクトである。現在、新しい量子モンテカルロ法の実装を終了し、コンダクタンスを線形応答理論によって評価する解析手法を考案したところである。今後、この研究をさらに推し進める。(4)近藤模型のベーテ仮説解を用いた形状因子の計算を行った。これは近藤量子ドットのダイナミクスの厳密な記述への道をひらくものである。引き続き数値計算を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポンプ電流の理論については一通りの理論が構築でき、次の熱流の理論へと進むことができる状態になった。フォノン輸送については、解析理論と数値計算の細かい比較を終了し、論文執筆に十分な結果を得た。総合して、全体としてほぼ予定通りに研究が進捗していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後はナノスケール素子の非平衡定常輸送に関する定常状態熱力学の構築へと研究を進展させるほか、量子モンテカルロ法を利用して数値計算を推し進め、新しい励起状態の情報を利用した実験提案なども考えたい。フォノンの熱輸送については、アルゴリズムの改良などを行い、量子臨界現象との関係をよりあきらかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度が科研費の最終年度であり、成果発表のために海外出張を予定しており、そのために平成28年度中に予算をすべて使いきらずに、平成29年度で使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
海外の国際会議への参加費用として使用することを計画している。
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