研究課題/領域番号 |
15K05130
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高根 美武 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40254388)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / ワイル半金属 |
研究実績の概要 |
今年度は主として二つの課題について研究を行い,一編ずつの論文を発表した. 一つ目は,強いトポロジカル絶縁体表面に現れる二次元ディラック電子系における電気伝導度に関する課題である.従来,二次元ディラック電子系は乱れを強くしてもアンダーソン局在が生じないことが知られていたが,乱れの弱い領域における振る舞いについてははっきりしない点が残されていた.スケーリング理論に基づいた数値解析を行い,乱れの弱い領域では幅方向の境界条件(周期的,反周期的)に依存した非普遍的な振る舞いが生じることを明らかにした.また,清浄極限がスケーリング曲線の不安定固定点に対応することを見出した. 二つ目の課題は,ワイル半金属のカイラル表面状態に対する乱れの影響である.ワイル半金属のバルク状態に対する乱れの効果は幾つかの研究によって詳細に検討されてきたが,カイラル表面状態の乱れに対する安定性は不明なままであった.ホール・バー状に電極を配置したワイル半金属におけるホール・コンダクタンスを数値的に計算し,乱れの影響を検討した.その結果,乱れがある臨界値より小さいならカイラル表面状態は安定に存在し,異常量子ホール効果が発現することを明らかにした. その他,電荷密度波秩序をもつ一次元ディラック電子系における動力学について検討し,それを記述する枠組み(時間に依存したGL方程式とBoltzmann輸送方程式)を解析的に導出した.この結果は一編の論文として出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度に行う予定であった課題(二次元ディラック電子系における電気伝導度のスケーリング解析)を前倒しして実行し,論文として発表できた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で構想した主たる課題については,昨年度までに一通り研究を行い各々について論文を発表することができた.今後は関連する領域で新たな研究を構想したい.先ずは,ワイル半金属に関する研究過程において気になった,ステップ端におけるカイラル表面状態の振る舞いについて検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
導入予定であった計算機の仕様(メモリーサイズ)を決定できず,購入を先延ばしせざるを得なかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
計算機の仕様が決定したので,その費用に充当する予定である.
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