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2017 年度 実施状況報告書

トポロジカル量子相とその階層構造,不純物に対する頑強性の理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K05131
研究機関広島大学

研究代表者

井村 健一郎  広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (90391870)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2020-03-31
キーワードトポロジカル絶縁体 / トポロジカル量子ポンプ
研究実績の概要

多様化するトポロジカル物質について、多角的に研究を行っている。本年度はトポロジカル量子ポンプに対する不純物効果について研究を行った他、高次トポロジカル絶縁体の研究に着手した。
トポロジカルな量子ポンプはトポロジカル絶縁体の「時間方向版」である。トポロジカル量子ポンプの理論的な提案はThoulessの論文[1]まで遡るが、最近これが冷却原子系を用いての実験的に実装された[2]。本研究ではそのようなトポロジカル量子ポンプに対する不純物効果について調べ、量子化された電子ポンプが不純物に対してどの程度頑強であるか検証した。
[1] Thouless, D. J., Phys. Rev. B 27, 6083 (1983).
[2] S. Nakajima, et al., Nature Physics 12, 296; M. Lohse, et al., ibid. 350 (2016).
従来型トポロジカル絶縁体の研究からやや派生して高次トポロジカル絶縁体の研究に着手した。従来型のトポロジカル絶縁体において、そのトポロジカルな性質はいわゆるバルクエッジ対応の関係に保護されている。この関係は、双極子的な対応関係である。これに対し、高次トポロジカル絶縁体ではその多極子版にあたる対応関係が成り立つ。本研究では、トポロジカル絶縁体等において見られるトポロジカルな性質の階層構造について研究してきた。このような階層構造の例として、強いvs.弱いトポロジカル絶縁体、トポロジカル結晶絶縁体等の例があったが、最近注目を集めている高次トポロジカル絶縁体はこれらとは一線を画す新しい系統の高次トポロジカル物質である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トポロジカル量子ポンプに対する不純物効果の研究において一定の成果を得た。この研究結果については、国際会議LT28で発表を行った。また、研究成果を論文にまとめたものを当国際会議の会議録に発表した。J. Phys. Conf. Ser. に出版済み。
最近注目を集めている高次トポロジカル絶縁体の研究に着手した。これについて、2018年春の物理学会で発表を行った他、現在投稿論文を執筆中。

今後の研究の推進方策

従来型トポロジカル絶縁体の研究から派生して高次トポロジカル絶縁体の研究に着手している。昨年末、アメリカ物理学会誌のPhysics VIEWPOINTに"Topological insulators turn a corner"というタイトルの記事[1]が掲載され、高次トポロジカル絶縁体に関する4つの論文が紹介された。ここに紹介されなかったもう一つの研究[2]を含めて、この高次トポロジカル絶縁体に関する研究がこの1年で急速に進んだ。
いわゆる従来型のトポロジカル絶縁体はバルクがギャップありなのに対し、表面/エッジはギャップレス、つまり金属的である。表面の金属状態はバルクのトポロジカル数によってその存在/非存在や個数が規定されている。このような従来型トポロジカル絶縁体に対し「高次の」トポロジカル絶縁体もあることが指摘され、注目を浴びている。例えば、2次のトポロジカル絶縁体は、バルクがギャップあり、エッジもギャップあり、しかしコーナーがギャップレス、つまり、ギャップレスのコーナー状態を呈する.同様にしてより高次のトポロジカル絶縁体も定義できる.別の言い方をすると、今までトポロジカルに自明と思われていた「通常」絶縁体の中により高次のトポロジカル非自明性を携えた系があることが認識されつつある。
高次トポロジカル絶縁体について、まだ未知のことが多いが、本研究では高次トポロジカル絶縁体の形状に対する安定性、不純物に対する頑強性等を中心に調べていく予定である。
[1] S. A. Parameswaran and Y. Wan, Physics 10, 132 (2017).
[2] S. Hayashi, arXiv:1611.09680.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Postech(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Postech
  • [雑誌論文] Short Ballistic Josephson Coupling in Planar Graphene Junctions with Inhomogeneous Carrier Doping2018

    • 著者名/発表者名
      J. Park,J. H. Lee, G.-H. Lee, Y. Takane, K.-I. Imura, T. Taniguchi, K. Watanabe, and H.-J. Lee
    • 雑誌名

      Phys. Rev. Lett.

      巻: 120 ページ: 077701 (1-6)

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.120.077701

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 多極子トポロジカル絶縁体・ポンプ系とコーナー状態/不変量2018

    • 著者名/発表者名
      井村健一郎,桐木達也,林晋,吉村幸徳,中西毅
    • 学会等名
      日本物理学会第73回年次大会,領域4, 22pB101-2
  • [学会発表] Multipole topological insulators and pumping: from the viewpoint of bulk-edge and corner correspondence2018

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Kiriki, Ken-Ichiro Imura, Yukinori Yoshimura, Shin Hayashi, Takeshi Nakanishi
    • 学会等名
      BEC2018: Variety and universality of bulk-edge correspondence in topological phases - From solid state physics to transdisciplinary concepts
    • 国際学会
  • [学会発表] Bulk-edge correspondence in topological transport and pumping2017

    • 著者名/発表者名
      K.-I. Imura, Y. Yoshimura, T. Fukui and Y. Hatsugai
    • 学会等名
      28th International Conference on Low Temperature Physics (LT28)
    • 国際学会
  • [学会発表] 非共型(メビウス)トポロジカル絶縁体の表面状態に関する理論的考察2017

    • 著者名/発表者名
      井村健一郎,田中新
    • 学会等名
      日本物理学会2017年秋季大会,領域4, 24aB32-4
  • [備考]

    • URL

      http://home.hiroshima-u.ac.jp/imura/

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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