研究実績の概要 |
多様化するトポロジカル物質について、多角的に研究を行っている。本年度は非エルミートなトポロジカル絶縁体という新しい領域に取り組んだ。これまで考えられてきたトポロジカル絶縁体は、(当然のことながら)エルミートなハミルトニアンによって記述されるエルミートなトポロジカル絶縁体である。非エルミートな系の量子力学はまだ未開拓で未知の点が多い分野であるが、最近、このような系におけるトポロジカル相が盛んに議論されるようになった。[1] [1] S. Yao and Z. Wang, “Edge States and Topological Invariants of Non-Hermitian Systems,” Phys. Rev. Lett. 121, 086803 (2018). 我々は現在、従来のエルミートな系のトポロジカル相が非エルミートな系にどのように一般化されるか、典型的なトポロジカル絶縁体を用いて調べている。非エルミートなトポロジカル相においては、いわゆる非エルミート(異常)表皮効果により、バルク状態も一般にはシステムの表面(エッジ)に偏在してしまうため、トポロジカル相を特徴づけるための一般的手段であるバルク・エッジ対応が、通常の意味では成り立たない。 我々はこの点に特に留意しつつ、理論的な解析を進め、非エルミート・トポロジカル相を定量的に記述する手法を開発、実用に向けて改良中である。これらの結果について、近日中に論文にまとめ、公表する予定。
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