研究課題
近藤絶縁体表面のバルクギャップ内にスピン分離したトポロジカル表面状態が形成される”トポロジカル近藤絶縁体”SmB6とYbB6の希土類六硼化物に注目して角度分解光電子分光法(ARPES)を用いて研究を進めてた。狙いは、SmB6のSmサイトをYb置換することで、近藤ギャップやトポロジカル表面状態にどのような影響があるかだったが、Yb10%置換では、ほとんど違いが現れないことが分かった。そこで、母物質に絞り、Γ(-)点周りのこれまでARPESスペクトルで明瞭に観測されていないトポロジカル表面構造について入射光偏光依存性を用いて、観測を行った。第一ブリルアンゾーンΓ(-)点周りにおいて、奇対称な電子軌道を観測できるS変更配置を用いて測定を行うと、Γ(-)点周りに円形のフェルミ面が観測された。この構造は、SmB6劈開表面は、2X2表面再構成があることが分かっており、それにより起こる表面ウムクラップによるバンドの折り返しという報告がある。そこで、SmB6の[100]面を機械研磨、真空中でのArスパッタ、アニールにより明瞭なLEEDパターンが得られる清浄表面を出し、アニール温度の制御により2x2の表面を出すことに成功した。ここから、2x2表面でのフェルミ面は、劈開表面で得られるフェルミ面と異なることが分かった。さらに、劈開表面S偏光配置で得られたバンド構造は、低温で金属的であるが、60K付近で、明瞭な金属絶縁体転移を起こす。この金属絶縁体転移温度は、抵抗率等の結果から求められたバルクの金属絶縁体転移温度とほぼ一致し、エネルギーギャップが閉じ(開き)、バルクが金属(絶縁体)化すると絶縁体(金属)化する。このことは、バンド反転状態が無くなると同時に、トポロジカル表面状態が無くなることを意味するものと考えられ、このΓ(-)点周りの円形のフェルミ面がトポロジカル表面状態であると結論づけられる。
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