研究課題/領域番号 |
15K05135
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
福田 昭 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70360633)
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研究分担者 |
寺澤 大樹 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90589839)
佐々木 豊 京都大学, 理学研究科, 教授 (60205870)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子ホール効果 / 核スピン / 2次元電子系 / グラフェン / エッジ状態 / 動的核スピン偏極 / 弱局在効果 / 普遍的電導度揺らぎ |
研究実績の概要 |
磁場中の2次元電子系では、量子ホール状態に代表されるように、1次元エッジ状態やトポロジカル励起の研究に理想的であり、最近の我々の研究から分数量子ホール状態での動的エッジ状態変化において、核スピンが多様で重要な役割を果たすことが分かってきた。本研究では、高移動度を持つGaAs 量子井戸構造を用い、ホールバー形状だけではなくエッジの効果を排除したコルビノ形状も併用して、電気伝導測定やマイクロ波への伝導応答の観測を行い、エッジ状態での電子の散乱機構とその動的変化過程、および関連するトポロジカルな励起状態とその生成・消滅機構を解明する。本年度は、東京大学物性研究所において作成したホールバー形状およびコルビノ形状の2次元電子気体の同時伝導度測定が可能な試料のデバイスを京都大学において希釈冷凍機で冷却し、磁場中で輸送現象測定を行った。その結果、明瞭なν=2/3量子ホール効果を観測し、これまで観測されていなかった高磁場領域において、電流誘起の新たなホールプラトーが生じることを観測した。この結果は、日本物理学会において発表した。一方、核スピンを表面修飾により注入したグラフェンや、2次元電子系を近接配置した2層系においても、エッジ状態の動的変化およびトポロジカル励起のダイナミクスの研究を行うのがもう一つの目的であるが、本年度は、特にその量子輸送特性を詳細に調べるため、剥離法により作成した単層グラフェンにおいて、弱局在現象における量子干渉効果の特に温度依存性について、研究成果を公表した。また、希ガス原子が吸着したグラフェンの輸送特性についても研究についても、国際会議で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GaAs量子井戸構造を持つコルビノ形状の新しい試料のデバイス化は順調に進み、強磁場中で分数量子ホール効果を観測するまでに至った。しかしながら、低ゲート電圧域での量子輸送特性に問題があるため、新たな試料を作成する必要がある。また、グラフェン試料においては、弱局在効果に関する論文を出版したほか、量子ホール状態を観測し、こちらも順調に研究が進展している。しかしながら、兵庫医科大学における実験室が、新棟移転に伴う引っ越し作業を行うため使用できない期間があったため、本研究費の期間延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、 1)高移動度を持つGaAs量子井戸構造を用いた動的核スピン偏極実験の結果を再現するためのシミュレーションを行い、動的核スピン偏極機構の理論的な解明をさらに進める。 2)GaAs量子井戸構造を持つコルビノ形状の新しい試料を改良して、低ゲート電圧域での量子輸送特性を改善し、ホールバー形状の試料のデータを比較することにより、動的核スピン偏極におけるエッジ状態の果たす役割の解明を行う。 3)グラフェン試料において、核スピンをもつ分子で表面修飾を行い、動的核スピン偏極に関する実験を行う。また、吸着グラフェンにおける、量子干渉効果などの量子輸送特性のさらなる解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 兵庫医科大学における新棟移転に伴う引っ越し作業等により、実験の遂行が不可となる期間が生じたため。 (使用計画) GaAs試料およびグラフェン試料の、低温での量子輸送特性実験を行うために使用予定である。
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