研究課題
本研究の主な目標は強誘電体などの新規酸化物を高圧下で合成し、さらに比熱、熱膨張率、熱伝導率などの熱測定を通して物質の構造や相転移、構造不均一性についての新しい物性現象を明らかにすることである。本研究では前年度までにもパイロクロア型酸化物を中心に複数の酸化物の合成を高圧下で得ることに成功しており、最終年度も高圧合成を進めた。特に、最終年度においては前年度までに高圧合成で得られた酸化物の物性測定研究を進め、特異な物性を明らかにした。まず、パイロクロア型の結晶構造をもつEr2Pt2O7の良質多結晶試料を6万気圧下で合成することに成功し、この試料を用いた比熱と中性子非弾性散乱実験を行い、詳細な解析を進めた。結果として、Er2Pt2O7はPalmer-ChalkerのXY型のスピン相互作用をもち、さらに低温で複数の相が競合していることが明らかになった。これは、現在世界中で活発に進められているパイロクロア酸化物の幾何学的フラストレーション研究において非常に重要な結果である。また、同じく6万気圧下の高圧合成でペロブスカイト型LuMnO3の良質試料を合成することに成功し、この試料の比熱と中性子回折実験からこの物質が低温で示すE型反強磁性スピン構造の詳細な解析を進めた。この物質はマルチフェロイクスとして非常に注目されているが、高圧下でのみ合成が可能で、これまでは詳しく分かっていなかった。今回の詳細な磁気構造解析から、スピンの配列がどうやってマルチフェロイクスを発現するのかが明らかになった。さらに、最終年度ではパイロクロア型のTb2Ti2O7の比熱と熱膨張測定の実験を進めると同時に、熱膨張測定装置の改良を進めた。
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