研究課題
次世代低コスト太陽電池として注目される有機薄膜太陽電池は、光照射により生成した励起子の電荷分離を促進させ、ドナー(電子供与体)/アクセプタ(電子受容体)界面面積を増やすために、光電変換層にはドナー材料とアクセプタ材料の混合膜(バルクへテロ接合; BHJ)が使われている。有機薄膜太陽電池を高効率化するためには、適切なドメイン相分離構造形成、並びにその物性評価が重要である。poly(3-hexylthiophene)分子内には、硫黄S原子が存在している。本研究では、硫黄原子のK吸収端のエネルギー範囲の放射光を用いて、吸収スペクトルのXAS(x-ray absorption spectroscopy)の測定を行ってきた。放射光の入射方向に対して実験試料を回転させることにより、吸収スペクトルの 入射角依存性の測定を行った。 クロロホルム溶媒作製試料では、入射角依存性は見られなかったが、ジクロロベンゼン溶媒作製試料では、入射角依存性があった。ジクロロベンゼン溶媒作製試料において、垂直方向入射の時、メインピーク強度が強く、微小角入射では強度が弱かった。poly(3-hexylthiophene)の主鎖方向であることを考慮すると、主鎖は、基板に平行になっていることを明らかにできた。一方、入射角依存性がないクロロホルム試料内では、ドメイン成長サイズが小さいだけでなく、poly(3-hexylthiophene)分子の配向もそろっていない様子を捉えることができた。
2: おおむね順調に進展している
概ね順調に研究を進めることができている。
有機太陽電池の機能と物性の関係を明らかにするために、ドメインの構造と局所的な電子状態に関する研究を行う予定である。
平成27年度は放射光実験に関する研究打合せを予定していたが、重要会議と日程が重なり研究打ち合わせ自体が延期となったために次年度使用額が生じた。
放射光実験計画の打ち合わせのための旅費に活用する予定である。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 619 ページ: 12046-1-12046-4
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JPS Conf. Proc.
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