強相関電子系層状鉄酸化物LuFe2O4はマルチフェロイック的な振る舞いを示し、 Feサイトは電荷・磁性・軌道の多自由度を持つ。LuFe2O4の示す特異な誘電性を解明するためには、電荷秩序状態を理解することが重要である。本研究では、結晶構造のユニットセルに対して、積層方向に同周期と、2倍周期の電荷秩序ドメインが共存していることを明らかにした。更に、面内方向に比べ積層方向には、電荷秩序は短距離相関に留まっていた。電荷秩序ドメインの空間的な相関長は異方的であり、面内の周期性は、非整合であることを明らかにした。p型半導体材料とn型半導体材料といった2種類以上の材料が混在している機能性材料のドメインを研究する場合でも、放射光共鳴散乱実験では、元素選択的にドメインの物性を捉えることができる。通常、有機太陽電池材料では、可視・紫外分光測定により有機太陽電池材料全体としての電子物性を捉えることが多く、局所的な情報を捉えるのには限界がある。構造に関しても、ラボのX線回折実験では、高次の反射を検出することが難しいことが多い。上述の鉄酸化物材料以外にも、有機太陽電池薄膜に関して共鳴軟X線散乱実験を遂行することにより、ドメイン構造や局所的な電子状態に関して、詳細な情報を明らかにすることができた。具体的には、片方の有機分子材料に存在している元素に着目することにより、太陽電池性能を高めるためにドメイン構造内における適正な有機分子鎖間の距離やドメイン成長の条件を解明した。また、局所的な電子状態の変化が、ドメイン構造の発達状況に影響を及ぼす可能性があることについても明らかにした。
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