研究課題/領域番号 |
15K05141
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古崎 昭 国立研究開発法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 主任研究員 (10238678)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導体 / ディラック半金属 / 対称性 |
研究実績の概要 |
対称性によって守られたトポロジカル量子相について、いくつかのテーマについて理論研究を行った。研究成果の一つは、トポロジカル絶縁体およびトポロジカル超伝導体に対する電子間相互作用の効果である。自由フェルミオン系のトポロジカル絶縁体・超伝導体の分類理論が電子相関効果によってどう変更されるかを理解するため、表面のギャップレスのディラック粒子間にはたらく相互作用を動的なディラック質量項の形で表し、ディラック粒子を積分することで非線形シグマ模型を導いた。非線形シグマ模型に付加されるトポロジカル項に関する考察から、10種の対称類と各空間次元に対して、分類表をつくった。この分類表は、1次元BDIクラスのZ8や3次元DIIIクラスのZ16など、先行研究の結果を含み、それらを拡張するものである。次に、3次元の時間反転対称で鏡映対称性によって守られてトポロジカル結晶絶縁体に対して電子相関効果を調べ、この場合には分類がZ8になることを2つの異なる手法を用いて示した。さらに、鏡映対称性で守られた2次元ボーズ粒子系のトポロジカル相を分類した。 研究成果の2つめは、時間反転と空間反転で対称な3次元結晶で、価電子バンドと伝導バンドが点で接するようなディラック半金属に関する研究である。時間反転と空間反転のみではディラック点は不安定であり、回転や鏡映などの結晶対称性をさらに課すことで安定化する。回転対称性をもつ3次元物質に対して、回転軸上に生じるディラック点のトポロジカル荷を定義し、ディラック点の分類を行った。 研究成果の3つめは、トポロジカル絶縁体を特徴づけるトポロジカル電気磁気効果の研究である。磁場中で電気分極が生じる電気磁気効果を実験で検証するには、磁場中のトポロジカル絶縁体薄膜でランダウ準位充填率ν=0の量子ホール絶縁体が有望であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポロジカル絶縁体及びトポロジカル超伝導体に対する電子相関効果の問題に関して、非線形シグマ模型を用いた理論解析により10種の対称性クラスと各空間次元についてトポロジカル絶縁体・超伝導体を分類する一般論をつくることができた。これは重要な研究成果であると考えている。また、鏡映や回転の空間対称性によって守られたトポロジカル絶縁体やディラック半金属についても着実な研究の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
空間対称性に守られた非自明な電子状態の研究を行う。例えば、らせん回転や映進などの非共型空間対称性によって守られたディラック点やディラック線のバンド構造の理論を展開し、対応する物質を探索する。また、これまでに行った空間対称性によって守られたトポロジカル絶縁体・超伝導体に対する電子相関効果の理論研究を継続・発展させる。表面ディラック粒子系が対称性を破らずにギャップをもつメカニズムについて、より深い理解を得ることを目指す。例えば表面でトポロジカル秩序が起こる場合について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の一年目だったので、外国で開かれる国際会議に出席して研究成果を発表するよりも国内で研究を早く推進することを優先したため、旅費を当初計画ほどは使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は国際研究集会に積極的に参加して研究成果を発表し、情報収集を行う予定であり、そのために旅費を多く使用する。
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