研究実績の概要 |
要素技術のうち, 準光学伝送システムとESR スピンエコープローブの開発を行った. 準光学伝送系は3つのセクションに分けて開発を行った. すでに開発していた光駆動半導体スイッチからのミリ波ビームを長距離伝送に有利なビーム特性に変換するMOU-I (Matching Optics Unit -I). 次に5x7 インチの同一形状のミラーを複数枚用いることで長距離伝送を行うQOT (Quasi-Optics Transmission line ). 続いて, 超電導磁石(17T SCM)に設置されたコルゲート導波管によるESRプローブと最適カップルするビーム径に変換するMOU-II MOU-I (Matching Optics Unit -I). また, MOU-IIにはデュプレクサの機能や, ガン発振器にを用いたミリ波ベクトルネットワークアナライザー(MVNA)を用いたCW-ESRを行うことができる機構を加えて開発を行った. MOU-Iにより変換されたビーム形状の測定を行い, ほぼ設計値を満足するビーム形状の変換を確認した. そののちQOTにより約3mの伝送を行い, 同様にビーム形状の測定を行った. QOTはミラー枚数を少なく, 伝送距離を稼ぐために, ガウス近似には不利な45度の反射を行う設計をしていたため, 複数回の反射による近似のずれが確認され, バイガウシャンビームとして扱う必要があることを確認した.しかし, 近似のずれは予想の範囲であることが確認されたのでMOU-IIの設計時に, 実測したバイガウシャンビームのパラメータを用いてガウシャンビームでかつESRプローブと最適に結合する形状に変更することができた. またESRプローブはミリ波帯の円形コルゲート導波管を用い17 T の超電導マグネット, ヘリウム温度までの温調クライオスタットを組み合わせることで製作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた二つの要素技術である超短パルス高出力ミリ波の伝送のための準光学伝送系, またパルスESRのためのコルゲート導波管の開発を行った. 実測により, 計画していた技術開発が達成されたことを確認し, 学会等での発表を行った. 以上により本研究は順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
H28年度前半において, これらの要素技術を組み合わせる準光学伝送系およびエコー信号だけを取り出す光励起半導体シャッターのレーザー光学系および電磁波の光学系の製作を行い, 信号の観測が行えるようにする. 後半から装置の特性試験として, 典型的なラジカルの溶液, BDPAやDPPHのスピンエコーによる緩和時間の測定を行う, トルエンやベンゼンにこれらのラジカルを溶かし濃度を変えることにより緩和時間を変化させてその様子を測定することで, 本装置の特性を調べる. これらのラジカル溶液については, X-bandのESRエコー測定はすでに行っており, ある程度の濃度と緩和時間の関係はすでに得ている.
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