研究課題/領域番号 |
15K05144
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
光藤 誠太郎 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (60261517)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高周波パルスESR / 高出力遠赤外 / ミリ波 / 準光学 / ジャイロトロン / ナノ秒パルス / ヘテロダイン検波 / ニトロキシラジカル |
研究実績の概要 |
本年度はpulsed ESR 測定の三番目の要素技術である受信系の開発補行った. 微弱なecho信号の計測のためには, 励起光を除去して, echoのみを受信機に導く必要がある. そこで励起光のパルス化の時に用いた, 光駆動半導体スイッチの技術を用い, 励起光は透過させ, エコーおよびFID部分にタイミングを合わせて, NdYAG(SHG)レーザーを同期し照射することで, 信号のみを反射し受信機に導くシステムの開発を行った. これにより励起光を約 -20 dB減衰しecho信号部分のみを取り出すことができることを確認した. さらに, このシステムを用い154 GHz のジャイロトロン出力を用いてパルスESRの実験を行った. 試料はTEMPOラジカルをポリスチレンに分散し濃度50 mMに調整したものを用いた. また温度はLHe温度から室温まで変化させて測定を行った. 1/2π及びπパルス幅はそれぞれ10 nsec と 20 nsec で行ったがハーンエコーの検出にはいたらなかった. エコー観測を目指していたが観測に至らなかった原因として, 一つは受信系の感度(S/N)不足が考えられる. そこで, 高感度の検出を行うために, ハーモニックミキサーを用いたヘテロダイン検波システムの開発を行った. コールドテストの結果, 現在用いているショットキーダイオードに比べて30倍程度のS/N比の向上が確認できた. もう一つは光駆動半導体スイッチによるバルス成型時の電磁波の漏れがバックグラウンドとなって微弱なエコー信号の検出を妨げている点であり. この迷光の主な原因はパルス成型時に光駆動半導体スイッチの周囲から回り込んでくる, ガウスビームのすそ野の電磁波であることが分かった. これは準光学系に簡易的なアパーチャーを組み込むことでかなり抑えられることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた受信系の開発は完了し, ハーンエコーの測定を開始することができた. 本年度中にファーストシグナルを得ることを予定していたが, 観測には至らなかった. これは予想していたよりもエコー信号が弱いか励起光の出力が小さかったこと. または現在用いている超電導磁石は高均一タイプではないので磁場均一度の不足から信号が広がってしまっている等が考えられる. いったんパルス幅を見直すためにFID測定からスタートすることと, 準光学系をより精密に整備し, 迷光や受信機をより高感度なものにすることで, 解決できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の問題点を踏まえ開発を行った, 受信機をより高感度検出が行えるヘテロダイン検波法による検出器に交換する. また受信系の励起光の除去率を向上するために, 光学系に回転ステージ等を導入して, より精密な光学系の調整が行えるシステムとする. また準光学ミラーを新たに加えること, アパーチャーを簡易的なものからしっかりしたものに交換しまたその配置を最適化する. これにより迷光を抑えるとともに励起光をより減衰し -30 dB程度の励起光の除去率を目指す. またの受信機の交換と迷光等の削除によりエコー信号の測定を実現したい. 一方試料についても同じニトロキシラジカルではあるがg値やハイパーファイン定数の小さなBDPAについても測定を行う. また, ハーンパルス幅について20 nsecが現状で最大であったが, レーザー光学系を組み替えて, 単一パルスであるが容易に任意のパルス幅に調整できるシステムを構築し, まずはパルス幅を変えながらFIDの測定を行う. これにより必要なパルス幅を見積もり, 次にレーザー系をもとにもどすと共に, 光学遅延路をFID測定で見積もられたパルス幅になるように構築しなおす. これによりハーンエコーの測定が実現できると考えている. これらを行った後echoの測定ができない場合は, 試料部に空洞共振器を用いる必要があると考えている. ただしジャイロトロンの周波数の調整は難しいので, 周波数可変の空洞共振器の製作が必要である. 周波数可変の空洞共振器についてはピエゾマニピュレーターによるファブリペロー型共振器の開発を他のテーマで開発しており. 本実験に適したQ値に変更することで利用できると予測している.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品や備品を節約して次年度繰越金が生じた. 金額としてもわずかであり緊急に使用するより次年度に繰り越し有効に活用することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度計画を進展させ, 委託加工費や光学系部品購入及び実験に用いる寒剤などの消耗品費として有効に活用する.
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