| 研究課題/領域番号 |
15K05145
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| 研究機関 | 大阪大学 |
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研究代表者 |
赤木 暢 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60610904)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | マルチフェロイック / 強磁場 / 電子スピン共鳴 / 磁化 / 電気分極 |
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| 研究実績の概要 |
超格子構造を持つオケルマナイト物質Ca2CoSi2O7における異常磁化過程の解明を目的とし研究を進めた。オケルマナイト物質では、交換相互作用の大きさに対し、単イオン異方性が強いために、これまでの研究では超格子構造を示さない物質においてもスピン状態を正確に理解することが困難であった。本研究では、異方性の小さいSr2CoGe2O7において実験を行った。磁化過程から異方性の強い系で見られていた複雑な振る舞いは見られず、非常に単純なスピン系で理解できることが予想された。実際、パルス強磁場電子スピン共鳴実験から得られた結果は、簡単なモデルで説明できることも確認できた。
パルス強磁場電子スピン共鳴実験では、非常に小さなゼロ磁場ギャップを観測した。このギャップは、電気分極間の相互作用導入することでよく説明できる。また、磁化飽和後に2-マグノンモードが観測された。この吸収モードは、外部磁場印加方向と電磁波の入射方向を変化させると消えたり、現れたりすることがわかった。この電磁波入射方向依存性を詳しく調べた結果、このモードは、スピンと電気分極の相関により現れたスピン四重極子モードであることがわかった。電子スピン共鳴によるスピン四重極子の観測は理論的には予測されていたが、本成果が初めての実験的実証であり、マルチフェロイックのみならず、ネマティック磁性など多くの研究分野で興味を集めている。
Ca2CoSi2O7における実験も進めており、中性子回折実験からゼロ磁場での磁性について情報を得ている。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sr2CoGe2O7におけるパルス強磁場電子スピン共鳴測定から、大きな成果を上げることができた。これにより、オケルマナイト物質の電気磁気相関を説明できたとともに、マルチフェロイック物質におけるスピンと電気分極の相関を微視的に理解できるようになった。このように、Ca2CoSi2O7における電子スピン共鳴測定の結果を解析する足がかりを得ることができており、研究は着実に進んでおり順調である。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から通常のオケルマナイト物質における磁気励起を理解することができるようになった。今後は、Ca2CoSi2O7に注目し、異常磁性の解明を目的としパルス強磁場電子スピン共鳴測定を中心に進めていく。さらに、偏光パルス強磁場電子スピン共鳴測定の開発を行い、偏光条件による磁気励起の変化を測定し、電気磁気相関を明らかとする。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
当初は元素置換により様々な物質を作成し、それらの測定結果を比較していくことで研究をすすめることを計画していた。この計画に沿って進めた結果、Sr2CoGe2O7におけるスピン四重極子の電子スピン共鳴による観測に成功した。この成果によって、オケルマナイト物質における磁気励起をよく理解することができ、物質を絞り研究をすすめることが可能となったため、試料合成に当てるべき費用を節約することができた。このため次年度使用額が生じた。
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| 次年度使用額の使用計画 |
今後は、Ca2CoSi2O7に注目し、パルス強磁場偏光電子スピン共鳴実験を中心に研究を進めることを予定しており、そのための測定プローブ開発の費用にあてる予定である。
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