研究課題
重い電子系超伝導体CeCu2Si2は、4万気圧という圧力近傍で超伝導転移温度が2倍以上に増大すること知られている。価数揺らぎ機構の理論では、強磁場において有限温度で静的価数転移の出現が予測されている。そこで、これまでに強磁場・超高圧NMR実験を遂行し、強磁場・高圧下で価数増大を伴う新たなクロスオーバー現象が見出した。このクロスオーバーは電場勾配の変化を伴う点に特徴があり、三宅、渡辺等の電荷揺らぎを媒介とした超伝導理論との比較は今後の重要な課題である。平成28年度までの高圧Cu-NMR実験では、5.4GPaおよび6.2GPaの圧力発生に成功し、Cu核のNQR周波数、ナイトシフト、核磁気緩和率、全ての物理量が20 Kおよび40 Kで顕著に減少することが明らかになった。NQR周波数の減少は、Ce価数の増大を意味しており、高圧・高磁場下で価数の変化を伴う新たなロスオーバー現象を見出したと考えている。この変化が磁場誘起転移かどうかを確認するために、磁場を13Tまで下げて測定したが、いずれの圧力でもクロスオーバーの消失は観測されていない。29年度は7.0GPaというさらなる高圧下、22Tという高磁場下でCeCu2Si2の63Cu核の核四重極周波数 、核磁気緩和率、ナイトシフトの測定を行うことにより、新たなクロスオーバーの相図の実態が明らかになった。特に、クロスオーバー温度(T*)を低圧に外挿すると、ゼロ圧での臨界圧力とほぼ一致していることから、T*は高圧超伝導相の引力機構と関係が深いことがあることがうかがえる。現在までのところ、T*には磁場依存性が全く見られないので、価数揺らぎ機構とは矛盾しているように見える。全体像を明らかにするには、臨界圧力領域や低磁場(or ゼロ磁場)領域での実験が今後の課題である。
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