研究課題/領域番号 |
15K05148
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
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研究分担者 |
田邉 洋一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80574649)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 表面スピンテキスチャ / NMR |
研究実績の概要 |
本年度は、トポロジカル絶縁体薄膜の表面スピン構造についての研究をミクロプローブであるNMR及び磁化率測定を用いて行った。トポロジカル絶縁体試料は、東北大との共同研究により作製した、テトラジマイト構造Bi1.5Sb0.5TeSe2単結晶を用いた。これについて、磁化率・磁化曲線の測定を行った。この実験は、別のプロジェクトにおいてトポロジカル絶縁体表面内で完全偏極しているスピン構造を捉えるための準備として、ミュオンサイトの超微細結合定数を求めるためものである。 ミュオン実験では、薄膜に平行に横磁場(TF)を印加し、TFに平行・反平行に向いたスピン流の時間反転対称性を破り、面に垂直なキャントを引き出し、これをミュオンの時間スペクトルの変化で検出する。しかしながら、ミュオンのエネルギーを表面トポロジカル層に停止させるほど小さく(~1keV程度)に下げると、さまざまなアーチファクトが発生し、緩和率や内部磁場が変化してしまう。 そこで、トポロジカル絶縁体に面平行磁場印加によってどの程度のキャント超微細場がミュオンサイトに発生するかを推定することが肝要となる。このため、ミュオンサイトの超微細結合定数を磁化率と横磁場ミュオン回転周波数の温度依存性をスケール、すなわち、いわゆるK-χプロットをすることで、超微細結合定数(T/μB)を求められる。 磁化率は、キュリー成分とBiの半金属的バンド構造を反映した強い反磁性の和として観測され、現在、解析中である。さらに、スピン構造を検出する実験はNMR(NQR)によっても行うことが出来るため、Bi核、Te核のNMR信号の検出についても現在、進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミュオンサイトの超微細結合定数を求めるためには、試料のマクロ磁化とミクロ測定によるシフトの両方の温度依存性を測定する必要がある。このうち、前者については既に8Tまでの磁場域、2-300Kまでの温度域で測定済であり、解析を行っている。後者については、横磁場μSRの温度変化測定を、数kOe以上の強磁場で行う必要があり、この実験は、日本・英国のパルスミュオン施設では不可能で、スイスかカナダのCWミュオンを用いて行う必要がある。この申請を現在行っているところである。 また、NMR測定についても現在、準備中であり、予備実験として、ターゲットと同じBiを含んだ銅酸化物高温超伝導体の単結晶試料の測定を行い、信号が観察されることを確認した。今後、ターゲット試料について測定する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、PSI施設へのビームタイム申請を行い、強磁場下での横磁場μSR実験を行う。横磁場ミュオン回転周波数の温度依存性を測定し、磁化率の温度依存性とスケールさせることによって、ミュオンサイトの超微細結合定数を決定する。 これにより、表面スピンがどの程度の角度でキャントすれば検出可能になるかが評価できるので、その結果を理論にフィードバックし、検出可能性を吟味する。 同時に、Bi/Te核のNMRスペクトル測定を行い、ナイトシフトの温度依存性から、両核の超微細結合定数を求める。これにより、零磁場NQRにわずかに面平行磁場を印加した際のスピンキャントを用いて、μSRと同様な実験が行えるかどうかを吟味する。
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次年度使用額が生じた理由 |
仙台(東北学院大)で行われた、日本物理学会への参加旅費(5名)に関して、現地での地下鉄利用の申請が年度内に間に合わず、自費支払となったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、国際会議へ二回参加予定であり、うち一回は大学院生も参加するため、当初の見通しより、支出額が多くなることが予想される。その分へ充当する予定。
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