研究実績の概要 |
本研究の目的は、スピン3/2反強磁性交替鎖物質RCrGeO5(RはYまたは希土類元素)の混晶を作製し、2つの交換相互作用の比(交替比)を系統的に変えることで、ボンド交替が強いダイマー状態(SD状態)と、ボンド交替が弱いダイマー状態(WD状態)という2つの異なる非磁性基底状態間の量子相転移が起こることを実験的に検証することである。SD状態とWD状態ともに、第1励起状態との間に有限のエネルギー差(スピンギャップ)が有る。 R=Y, Smの場合、基底状態はSD状態であることは分かっている。平成27年度の目標は、基底状態がWD状態である物質を選定することである。 空気中での固相反応法を用いて、7種類のRCrGeO5 (R = Nd, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er)の粉末試料を作製した。完全に単相である試料が得られなかった物質はあるが、全ての物質で、物性測定が可能な試料が得られた。東京大学物性研究所の共同利用施設において、58 Tまでの磁場中で、4.2Kで磁化曲線を測定した。スピンギャップが閉じることを示す磁化の急激な立ち上がりは観測されなかった。SQUID磁束計を用いて、0.01Tの磁場中での磁化の温度依存性を測定した。HoCrGeO5と166ErCrGeO5の中性子非弾性散乱測定を行った。 今後、磁化の温度依存性と中性子非弾性散乱の結果の解析を行い、スピンギャップの値と2つの交換相互作用の値を評価する。そして、それぞれの物質の基底状態がSD状態かWD状態かを考察する。
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