研究実績の概要 |
本研究の目的は、スピン3/2反強磁性交替鎖物質RCrGeO5(RはYまたは希土類元素)の混晶を作製し、2つの交換相互作用の比(交替比)を系統的に変えることで、ボンド交替が強いダイマー状態(SD状態)と、ボンド交替が弱いダイマー状態(WD状態)という2つの異なる非磁性基底状態間の量子相転移が起こることを実験的に検証することである。SD状態とWD状態ともに、第1励起状態との間に有限のエネルギー差(スピンギャップ)が有る。 平成29年度の目標は、基底状態がWD状態である物質を見つけることと、混晶の粉末試料の磁化の結果を解析することである。なお、平成28年度までの研究で、R=Y, Sm, Ho, Er, Ndの場合、基底状態はSD状態であることは分かっている。 RCrGeO5系で、基底状態がWD状態である物質を見つけるのは難しいと判断し、同じ結晶構造を持つNdCrTiO5に注目した。この物質の反強磁性転移温度は21Kと高いので、小さなスピンギャップ、すなわち、WD状態が期待される。中性子非弾性散乱測定を行った。スピンギャップは6.9meVで、NdCrGeO5の値(18meV)よりも小さかった。現在、磁気励起の結果を解析中である。 NdCrGeO5の磁気構造を決めた。Ndの磁気モーメントのみが秩序化する。一方、NdCrTiO5では、NdとCrの両方の磁気モーメントが秩序化する。NdCrGeO5の方がスピンギャップが大きいので、Crスピンがほぼ非磁性化していて、秩序化しないと結論付けられる。 混晶の粉末試料の磁化の温度依存性の結果について、解析を進めた。
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