研究実績の概要 |
本研究の目的は、スピン3/2反強磁性交替鎖物質RCrGeO5(RはYまたは希土類元素)の混晶を作製し、2つの交換相互作用の比(交替比)を系統的に変えることで、ボンド交替が強いダイマー状態(SD状態)と、ボンド交替が弱いダイマー状態(WD状態)という2つの異なる非磁性基底状態間の量子相転移が起こることを実験的に検証することである。SD状態とWD状態ともに、第1励起状態との間に有限のエネルギー差(スピンギャップ)が有る。 平成30年度の目標は、基底状態がWD状態である物質を見つけることである。なお、平成29年度までの研究で、R=Y, Sm, Ho, Er, Ndの場合、基底状態はSD状態であることは分かっている。 RCrGeO5系で、基底状態がWD状態である物質を見つけるのは難しいと判断し、同じ結晶構造を持つNdCrTiO5に注目した。中性子非弾性散乱測定の結果から、スピンギャップは6.9meVで、NdCrGeO5の値(18meV)よりも小さかった。しかしながら、磁気励起の分散関係から、基底状態はSD状態であると考えられる。
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