研究課題/領域番号 |
15K05152
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
神戸 振作 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主席 (40224886)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子臨界 / 重い電子系 / NMR |
研究実績の概要 |
今年度は、YbRh2Si2のスピンエコー減衰測定をさらに詳細に行った。NMR核である29Si 同位体を52%濃縮した高品質のYbRh2Si2を作成した。29Si 同位体の自然存在比は、4%程度なので、この濃縮により測定積算時間を100分の1程度に短縮できる。この単結晶試料を用いて、NMRスピンエコー減衰の測定を行った。減衰曲線には、通常のGauss型、Lorentz型の減衰に加えて、顕著な振動が見られることは昨年度既に明らかになっていた。そこで今年度は、さらにその温度依存を精密に測定したところ、300Kから20Kまではほとんど変化はないが、20K以下で振動周波数が大きく変化することがわかった。スピンエコー振動周波数は、Ruderman-Kittel相互作用を通じて、状態密度やフェルミ面の形状と関連している。従って、スピンエコー振動周波数が変化するということは、状態密度やフェルミ面の形状が変化していることを示唆している。そこでRuderman-KittelやBloembergen-Rowlandの議論に基づいて、測定されたスピンエコー振動周波数の変化からRuderman-Kittel相互作用定数及び、擬双極子相互作用定数の温度依存を求めた。これらの温度依存から、考えられる状態密度やフェルミ面の形状が変化を明らかにした。これらの考察から、NMRスピンエコー減衰の測定が、状態密度やフェルミ面の形状について明らかできる手法であることを確立した。また、圧力下の実験のために、小型のNMR測定用圧力セルを整備した。この圧力セルを用いれば、2GPa程度までの圧力下でのNMR実験が低温dilution領域で可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
YbRh2Si2の量子臨界研究では、フェルミ面の情報を得ることが大事であるが、スピンエコー減衰の測定によりそれがプローブできることがわかり、研究が進展した。また圧力下の実験の整備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
圧力下の実験を行う。圧力下の実験は、測定時間がかかるため、なるべく早く実験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
クライオスタットの運転計画に遅延が生じたため、消耗品冷剤(液体He、窒素)が当初予定ほど必要なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
圧力実験に必要な消耗品(圧力媒体、ガスケット等)や冷剤(液体He、窒素)に使用する予定である。
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