研究課題
量子臨界ゆらぎが支配するT=0Kでの相転移は、量子相転移と呼ばれ、従来の相転移と異なった様相を示すため、精力的に研究が行われている。また量子臨界点付近で超伝導が誘起される場合もあり、超伝導機構解明の観点からも興味が持たれている。典型的な量子相転移系のひとつが、重い電子系の磁気相転移である。近藤効果とRKKY相互作用が拮抗するため、磁気相転移が低温になりやすいからである。実際、多くの重い電子系Ce化合物で量子相転移現象が報告されている。一方、2002年、ドレスデンのグループが、重い電子系YbRh2Si2の磁気誘起量子相転移では磁気秩序と同時に電子の局在化がおきるため、従来と異なる新奇の量子相転移: "局所量子相転移”になっている可能性を報告した。その後、多くの研究がなされ、量子相転移の様相は明らかになってきたが、局所量子相転移の決定的な証拠は得られていなかった。重い電子系YbRh2Si2のスピンエコー減衰の磁場・温度依存を、高品質の単結晶試料を用いて測定した。 NMR核である29Si 同位体を52%濃縮した高品質の単結晶YbRh2Si2試料を作成した。29Si 同位体の自然存在比は、4%程度なので、この濃縮により測定積算時間を100分の1程度に短縮できる。この単結晶試料を用いて、NMRスピンエコー減衰の測定を行った。減衰曲線には、通常のGauss型、Lorentz型の減衰に加えて、明確な振動項が現れた。これはRK相互作用と擬双極子相互作用によるものと考えられる。この振動数には低温20K以下で大きな温度変化が見られた。これは、20K以下でフェルミ面の大きな変化あることを示している。YbRh2Si2では、70mKまで大きなフェルミ面の変化はないと考えられてきたが、本研究により、高温から変化があることを明らかにした。
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Physical Review B
巻: 95 ページ: 195121-1-8
10.1103/PhysRevB.95.195121