研究課題/領域番号 |
15K05161
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
松林 和幸 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (10451890)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高圧力 / 超伝導 / 四極子秩序 |
研究実績の概要 |
本申請では軌道自由度を有する非磁性基底状態に着目し、圧力印加による軌道秩序の抑制と重い電子超伝導の発現、軌道不安定性に起因する新奇な量子現象の起源を実験的に解明することを目標としている。また、複合極限環境下(極低温、高圧、高磁場)で用いることができる10万気圧級圧力セルの改良にも取り組むことで、10万気圧を超える超高圧域までの精密な相図の作成を目指す。 初年度は常圧で反強四極子秩序を示すPrV2Al20の高圧下、磁場中電気抵抗測定を行った。PrV2Al20は常圧において約50mKの極低温で超伝導を示すことが報告されていたが、超伝導発現が試料の純良性の違いに敏感であることが高圧下物性を議論する上でも問題となっていた。そこで良質な単結晶試料を用いて高圧下物性測定を行ったところ、圧力印加による反強四極子秩序の抑制に伴って超伝導転移温度が急激に上昇することを見出した。また、圧力と磁場を複合的に用いることで反強四極子秩序が消失した領域においては非フェルミ液体的挙動が観測された。同領域の電気抵抗率のデータは幅広い圧力・磁場領域においてスケーリング則が成り立つことが見出され、さらにその温度依存性が四極子近藤格子モデルから期待されるものとよく一致することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の異動によって実験計画に若干の遅れが生じたが、前所属機関との密接な連携によって反強四極子秩序を示すPrV2Al20における圧力温度相図の作成に成功した。磁場中の電気抵抗率の温度依存性の解析から見出されたスケーリング則は四極子自由度と伝導電子の混成効果に起因することが理論的にも強く示唆されており、本研究の目標達成に向けて着実な成果が得られつつある。これらの結果に関しては日本物理学会及び国際会議において発表を行い、現在は投稿論文を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
より精密に高圧力と磁場を制御した実験を行うことで、強四極子秩序を示すPrTi2Al20と反強四極子秩序を示すPrV2Al20の圧力温度相図の類似点と相違点を鮮明にし、四極子秩序と超伝導の相関に関する包括的な理解を目指す。具体的には、10万気圧を超える圧力が発生可能な圧力セルの改良に取り組むことで、完全に四極子秩序が消失した高圧域も含む相図を作成し、非フェルミ液体からフェルミ液体へのクロスオーバーの可能性について調べる。また、PrV2Al20における超伝導のバルク性や超伝導ギャップに関する情報を得るために、高圧下比熱測定法の開発にも取り組む。
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