研究課題
本研究では、低温で四極子秩序を示すPrTr2Al20(Tr=Ti,V)の圧力効果による四極子不安定性にともなって発現する重い電子超伝導や新奇な量子現象の特徴を実験的に明らかにすることを目的とした。最終年度では、PrTi2Al20の強四極子秩序が消失する11 GPaも含む広い圧力領域までの高圧・極低温・磁場相図の完成させるために、圧力セルの改良に取り組んだ。具体的には、高圧力発生の試料空間を従来型の50 %程度にすること、また圧力媒体にアルゴンを用いることで、高い静水圧性を維持しながら12 GPa程度の高圧力を安定的に発生させることが可能となり、PrTi2Al20の強四極子秩序が消失する臨界圧力付近における希釈冷凍機温度域までの上部臨界磁場および常伝導状態における電気抵抗率の温度依存の精密測定に成功した。その結果、パウリリミットを超えた高い上部臨界磁場を示すことが明らかとなったが、この系を記述する有効理論模型において超伝導を担う電子がf電子を含むことで生じる質量不均衡によって上部臨界磁場が異常な増大を示すという予測と整合する。また、超伝導を磁場によって抑制した常伝導領域では、四極子近藤効果に起因する非フェルミ液体的挙動が観測された。さらに強四極子秩序が消失する臨界圧力付近を境として、四極子近藤効果を特徴付けるエネルギースケールが圧力とともに顕著な増大を示すことも見出した。また、改良に成功した圧力セルを用いることで、非磁性の層状化合物Ta2NiSe5で実現する励起子凝縮と超伝導の相関を示唆する詳細な温度-圧力相図を得ることにも成功した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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