研究課題/領域番号 |
15K05162
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中野 智仁 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60507953)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 価数揺らぎ / 希土類 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
Ce, SmやYbなどの希土類を含む化合物や遷移金属化合物において『価数揺らぎ』を媒介とした新しい型の超伝導や非フェルミ液体状態の実現が提唱されている。申請者らは2009年に価数の揺らぎを媒介している可能性がある圧力誘起超伝導をCePtSi2において発見した。他にもCeCu2Si2等がこの超伝導の候補であるが,実例が少なく普遍的な考察はされていない。本研究では価数揺らぎによる新奇超伝導や状態,現象の探索を目的として,圧力や元素置換によってこれらが実現する可能性がある化合物を探索し,その物性を測定することにより,価数揺らぎに関する諸物性の普遍性を明らかにすることを目的としている。 今年度の主な成果を以下に要約する。 (1)CePtSi2に対して負の圧力効果を導入したCePt(Si, Ge)に対してゼーベック係数Sを測定した。その結果電子比熱係数に比例すると考えられるS/Tの大きさが格子定数増大にともなって減少し,量子臨界点から遠ざかっていることを示唆した。また,ゼーベック係数がこの系の電子状態の解明に有効であることが明らかになった。 (2)CePtGe2に関して低温でフェリ磁性を示すという報告と,強磁性を示すという報告があった。多結晶および単結晶試料を作成しこの物質がフェリ磁性(反強磁性)であるということを明らかにした。また,圧力降下を期待したSi置換を試みたが僅かしか置換されないことが明らかになった。しかし,この際,転移温度が上昇することも明らかになった。 (3)遷移金属α-Mn, 遷移金属硫化物TaS2に対して圧力下ゼーベック係数測定などを行った。価数の変化に関する情報は得られなかったが,秩序温度の制御に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は価数揺らぎによる新奇超伝導や状態,現象の探索を目的として,その可能性のある希土類化合物を探索,作成しその諸物性を測定することにより,価数揺らぎを媒介とする現象の普遍性を明らかにすることを目的としている。 本年度は新たにCe化合物を作成に成功した。また,これらの系に対してゼーベック係数測定が有効であることが明らかになり次年度に向けた指針ができた。一方,Yb化合物にかんしては難航している。また,本年度は遷移金属化合物にも着目した。
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今後の研究の推進方策 |
29年度も引き続き価数揺らぎを引き起こす可能性がある希土類化合物および遷移金属化合物の探索を行う。 得られた試料に対して各種物性測定を行い,価数揺らぎを媒介とした現象の探索を行うとともに,その普遍性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
低温領域での物性測定のため,液体ヘリウムデュワーを購入したがその際,納入が遅れたため,これに関する費用を翌年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
液体ヘリウムデュワーの運営に関わる物品および消耗品に当てる。
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