研究課題/領域番号 |
15K05163
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石川 文洋 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50377181)
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研究分担者 |
山田 裕 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10242835) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 単結晶 / 銅系酸化物 / 一次元伝導 |
研究実績の概要 |
本課題はプラセオ系銅酸化物である Pr2Ba4Cu7O15(Pr247) の電気伝導性の異方性を測定する事で一次元伝導性の発現機構を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するには単結晶試料の作成が不可欠であり,高圧酸素中で溶融法による単結晶育成を試みた。初年度において、先行研究とは大きく異なる温度領域に育成可能な条件が存在することが示唆されたため、融液の温度変化から見積もった融点を基にしてより詳細に温度条件の探査を行った。高圧酸素領域では、温度制御が困難であり、温度を設定温度にしたのちに酸素圧をあげるなどの操作が必要であった。その結果、Pr247相を主相とする条件を発見した。初年度の結果から予想したように、融点直下からの急冷プロセスを挟むことが重要であった。成長した結晶のサイズは最大で0.2mm程度である。ただし一定のPr124相が混入するため目視による結晶の判別は困難であった。c軸配向した試料のX線回折測定は、異なるc軸長を反映した回折ピークを示す他、EPMAの組成分析ではそれらの組成の違いを反映した銅組成の違いを示している。これらの方法で判別した試料について単結晶四軸X線回折測定を行い、得られた試料がPr247単結晶であることが確認できた。これらの条件を基により大型化の可能性を模索して、徐冷時間を長くするなどを行ったが当初の条件で得られたものから、より大型化や単相化することはできなかった。酸素還元以外のドーピングを可能にする方法としてバリウムサイトのランタン置換を試みたが、有意な量を置換した試料を合成することはできていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題において最も重要となる単結晶育成に成功した。初年度は微小で取り出しに至らなかったが、ある程度の大型化を実現したことで、0.2mm角程度という輸送特性を測定するには最小限の試料を得ることができた。初年度において試みた多結晶試料のフッ素置換によるドーピングに代わり、バリウムサイトのランタン置換を試みた。これは格子定数の変化によるキャリア導入の可能性を模索したものであるが、ドーピングに成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
0.2mm角程度という輸送特性を測定するには最小限の試料を得ることができたことから、これらの試料の電気抵抗の異方性を明らかにする本課題での主たる目的を達成していく。単結晶試料のの圧力下における電気伝導性の変化は、本系の一次元伝導性を明らかにする上で重要な測定である。また試料の還元処理による超伝導の発現も未確認であり、この検証も行う必要がある。
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