本課題はプラセオ系銅酸化物である Pr2Ba4Cu7O15(Pr247) の電気伝導性の異方性を測定する事で一次元伝導性の発現機構を明らかにすることを目的としている。この目的の達成のための単結晶試料の作成の試みを高圧酸素中での溶融法により初年度より取り組んできた。初年度での先行研究と大きく異なる育成条件の存在を示唆をする結果から、融液の温度変化から見積もった融点をもとにしてより詳細に温度条件の探査を行ったところ高圧酸素領域でPr247相を主相とする条件を発見した。成長した結晶のサイズは最大で0.2mm程度である。このように作成された複数の試料について電気伝導性の測定を行った。平板状の試料のc面内の方位はa軸,b軸の格子定数が近いために決定できなかった。試料の端面が結晶軸に沿っていることは確認でき,四角に端子を施しファンデルポー法を用いて測定をした。X線による試料同定ではPr247相またはPr124相を示したが,多くに試料は低い電気伝導性を示した。しかし高い電気伝導性を示した試料については,試料端面の方向によってPr247またはPr124相の電気伝導の異方性を示唆する結果を得た。さらに低温において伝導性の高い一方向についてのみ電気抵抗の急落を観測した。急落温度はPr247多結晶の超伝導転移温度の典型的な温度と一致しており,かつc面内のもう一方向では観測されなかった。このことからこの急落はPr247における金属的な伝導性を示すダブルチェーン方向の超伝導性を示していると考えられる。昨年度明らかになった育成条件をさらに精密化する目的でやや低酸素圧側の育成条件の探査を行ったが,Pr247を育成する条件には至らなかった。
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