研究課題/領域番号 |
15K05171
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木田 孝則 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50452412)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多重極限環境 / パルス強磁場 / トンネルダイオード振動法 / 強相関電子系 |
研究実績の概要 |
超強磁場,超高圧及び極低温などに代表される環境は極限環境と呼ばれる。このような極限環境を組み合わせた多重極限環境下では,物質系が様々な新奇現象を示すことはよく知られている。本研究では,非破壊型パルスマグネットとダイヤモンドアンビル圧力セル(DAC)を組み合わせた,パルス強磁場中・高圧力下物性測定装置を開発し,圧力誘起相転移現象を示す鉄系超伝導体や重い電子系化合物などの量子臨界点近傍の物理現象を理解することを目的としている。我々が用いているNi-Cr-Al合金製DACは実際の試料空間がφ0.3 mm程度と狭いため,電極の取り付けを要する電気抵抗測定は難しくなる。そこで本研究では,トンネルダイオード振動(Tunnel Diode Oscillation;TDO)法による,試料への端子付けが不要な非接触型の電気抵抗測定技術を取り入れた。 本年度は、クライオスタット、測定系の開発およびTDO回路の製作から始めた。代表的な鉄系超伝導体の1つであるFe(Te,Se)を用いて、完成した装置の動作確認を行ったところ、40テスラ・常圧下でこの物質の超伝導転移に対応する共振周波数の明瞭な温度変化および磁場変化を観測できた。パルス強磁場・圧力下においては、共振周波数の磁場応答を観測できるものの、圧力セルの金属部品の渦電流によるジュール発熱が見られた。 一方、このTDO法による共振周波数の外場応答は物質の透磁率と電気伝導度に依存するので、磁性絶縁体の場合、その動的磁化率の変化を観測することができる。一軸異方性型反強磁性体のMnF2を用いてTDO測定を行ったところ、この物質のスピンフロップ転移を観測することに成功した。これらの成果を日本物理学会第71回年次大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、クライオスタット、測定システムの開発および常圧下でのTDO測定を目標としていたが、実際には次年度に計画していたDACを用いた高圧力下でのTDO測定まで行うことができた。新たな問題点が見つかったものの、概ね研究計画に即して順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
Ni-Cr-Al製DACと金属ガスケットの組み合わせで、鉄系超伝導体のパルス強磁場中TDO測定を実施したが、パルス強磁場発生時に伴う渦電流によるジュール発熱の効果が大きいことが判明した。その対策として、今後は非金属・非磁性材料製のDACおよびガスケットの開発を実施する。非金属DACは、過去に研究代表者らがパルス強磁場中で使用した経験のある、高強度プラスチックのポリベンゾイミダゾール(PBI)製のものを使用し、ガスケットはダイヤモンドパウダーとエポキシ樹脂の混合物を用いて作製する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額であるので、「学術研究助成基金」のルールに従い次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画書に即して遂行する。
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