研究実績の概要 |
近藤半導体はf電子系において一つのカテゴリーを形成し,古くから盛んに研究されている。従来の近藤半導体の基底状態は大きなc-f混成により非磁性であったが,2009年に発見された近藤半導体CeT2Al10 (T=Fe, Ru, Os)は,T=Ru, Osは,反強磁性秩序を示す初めての例として盛んに研究されている。これは近藤半導体をベースとした反強磁性秩序であり,多くの異常物性を示す。本研究では,これら異常物性の起源を明らかにすることを目的としているが,本年度においては,以下のような成果が上がった。 ①CeRu2Al10のCeサイトをLa, Prで置換した系を調べた。 ②CeRu2Al10のRuサイトをRhで置換した系の光学伝導度を調べた。40meVのc-f混成ギャップがわずか5%のRh置換で消失することを見出した。一方,反強磁性転移温度T0は27Kから24Kへとわずかな現象しか示さなかった。これから,CeRu2Al10の高いT0の起源へのc-f混成の寄与は小さいことが明らかになった。 ③CeFe2Al10のCeイオンは価数揺動していること分かっており非磁性基地状態の近藤半導体である。ところがFeサイトをRhで置換すると,急速にCeの4f電子は局在的性質を示すようになることを見出した。これはTサイトのd電子数を変える置換になるが,Tサイトのd電子がこの系の磁気的性質を支配していることが明らかになった。 ④CeT2Al10の参照物質として,SmRu2Al10の磁気輸送特性および高精度X線回折による磁気秩序の詳細を調べた。反強磁性転移は15Kと6Kの2つあること,磁気モーメントはb軸を向いていることを明らかにした。また,X線回折により,磁気秩序の波数の温度依存性の詳細を明らかにした。
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