研究実績の概要 |
局所反転対称性が破れた系における秩序構造研究の一つとして空間群Cmcmに属するSmRu2Al10の磁気相転移について共鳴X線回折により詳しく調べた.その結果,12.3Kおよび5.6Kでの2段階の相転移は,それぞれ格子非整合な伝播ベクトルq=(0,0.759,0),および格子整合なq=(0,0.75,0)での磁気秩序であることがわかった.この格子非整合な伝播ベクトルの起源として,この系に特有のRKKY相互作用が挙げられる.また,この結果は,近藤絶縁体として注目されているCeRu2Al10でのq=(0,1,0)と対照的であり,他のRT2Al10系での磁気構造との対比も注目される.本結果は,Physical Review Bで発表された. 磁場誘起電荷秩序を示すことが最近明らかになったSmRu4P12について,高分解能格子定数測定,磁場方向を変えた共鳴X線回折を行い,転移に伴う原子変位と磁場誘起反強磁性の関係について調べた.磁場方向の変化に対して連続的に原子変位と反強磁性とが付随して変化し,常に同様な秩序状態を保つことが明らかになった.これは理論的に提唱されているGamma-1型の秩序相であることを示していると思われる.詳しい解析をほぼ完了し,論文にまとめる段階にまで進展した. キラル磁性体YbNi3Al9の単結晶育成に成功し,共鳴X線回折実験によりらせん磁気秩序の観測に成功した.
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