研究実績の概要 |
近年、PrTr2Al20においてPrのΓ3二重項が持つ四極子自由度に起因した強相関電子物性を示すことが報告され、それを契機に、四極子近藤効果に共通する物性の振る舞いが明らかになりつつある。我々はTr = Nb, Mo, Ta, W の単結晶の純良化を進め、低温物性測定を行った。そのデータ解析から、PrTr2Al20が基本的には四極子近藤格子系で期待される物性を示すが、Tr が持つd電子数に依存して少し異なる振る舞いを示すことを見出し、これまで考慮されていなかったd-f混成効果の重要性を示唆する結果を得た。Tr=Nb,Ta に関しては論文に纏め、Tr=Mo,Wについては学会発表を行った。 これまで十分に研究の行われていなかった1-2-20 系の参照物質であるLaTr2Al20の一群の研究を行い、4つの新超伝導体(Tr = Ti, V, Nb, Ta)を発見した。これらの物性と、既に報告されている他のRTr2Al20超伝導体と比較し、Rを中心とするカゴの"guest free space"に着目した解析を行い、Rサイトの非調和振動(ラットリング)がTcを上昇させるグループとそれ以外の要因(16cサイトのAlの巨大な原子振動もしくはTrのdバンドの特性)が関連しているグループに分類できることを見出した。この結果は、論文に纏め発表した。 我々が見出した磁場に鈍感な重い電子状態を示すSm化合物に関連して、これまでに報告されたSm系化合物と幅広く比較しながら、系統的な物性整理を行い、大きな電子比熱係数を持つ化合物がSmイオン平均価数が3価に近い中間価数状態に集中していることを見出した。これらの我々のSm系に関連した研究を契機に、Sm系における磁場に鈍感な重い電子状態を説明する一つの理論モデルが提案され、実験結果を定性的に説明する結果が得られている。
|