研究課題/領域番号 |
15K05182
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
小林 寿夫 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (40250675)
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研究分担者 |
池田 修悟 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (80414580)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多重極限 / 価数揺動 / 放射光X線 / メスバウアー分光 / X線吸収分光 / 量子臨界点 |
研究実績の概要 |
常圧力下80mKで超伝導が出現することが初めて示されたβ-YbAlB4は、常伝導状態において非フェルミ液体的性質を示していることから、量子臨界物質であると考えられる。また、20Kでの光電子分光測定によりYbイオンの価数は、+2.75と見積もられ、価数揺動が重要な役割を演じていると指摘されている。また、圧力印可により磁気秩序の可能性が電気伝導測定より指摘されている。一方、β-YbAlB4の多形体である、α-YbAlB4は価数揺動物質であるが基底状態ではフェルミ液体である。しかし、低温で約30kOeの磁場を印加することでメタ磁性転移を示し、非フェルミ液体的電気伝導性が観測されている。これらの結果から、α-YbAlB4とβ-YbAlB4での量子臨界性とYbイオンの価数揺動状態との関係に興味が持たれている。 本年度は、多重極限(低温・高圧力・強磁場)環境下でのβ-YbAlB4の放射光X線吸収分光測定を行った。その結果、約7GPa, 3Kでの吸収スペクトルの磁場依存性にYb3+イオンに対応する成分にのみ30kOeで異常を観測した。この異常は、双極子遷移での入射X線の偏光に対するYb4f電子の量子化軸の変化が原因と考えられる。すなわち、多重極限下で初めて微視的な測定手法でのβ-YbAlB4の磁気秩序を示唆する結果が得られた。 一方、α-YbAlB4単結晶試料を用い 2 K での磁場中174Yb放射光メスバウアー分光測定を行った。国内外で全く行われていない磁場中174Yb 放射光メスバウアー分光法を SPring-8 BL09XU により解析可能なスペクトルの測定に初めて成功した。その結果、磁化測定で観測されているメタ磁性転移に対応してセンターシフトの変化が有ることが分かった。今後詳細な解析が必要であるが、巨視的手法により観測されている非フェルミ液体的な現象とYbイオンの価数との関係を考察する上で重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外で全く行われていない磁場中174Yb放射光メスバウアー分光測定に成功した。多重極限(低温・高圧力・強磁場)環境下放射光X線吸収分光測定から、β-YbAlB4の磁気秩序の可能性を微視的な手法で初めて観測した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更は無い。特に、α-YbAlB4単結晶試料を用い 2Kでの磁場中174Yb放射光メスバウアー分光の詳細な測定を行い、Ybイオン価数と巨視的物性測定で観測されている非フェルミ液体的性質のの関係を明らかにしていく。
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