研究実績の概要 |
1. 前年度までに引き続き、振幅モードの、外場との結合の可能性を探求した。特に、前年度に引き続き。強結合超伝導体における集団励起モードを扱う手法を開発し、振幅モードの観測可能性を検討した。弱結合の場合には結合がない場合でも、ギャップに振動数依存がある場合には、振幅モードは通常の外場プローブと結合はすることを見出した。しかしながら、たとえば電荷密度のスペクトルに対しては振幅モードは結局は有意な影響をもたらさないことが明らかとなった。さらに、粒子-ホール対称性が大きく崩れた場合の検討も行った。この場合にも、振幅モードと外場の結合の可能性は生じるが、最終的には観測量に有意な効果をもたらさない。 これまでに多くの研究者によってさまざまな可能性が研究されてきているが、通常の実験手段による振幅モードの直接観測の可能性は依然として明らかではない。観測が困難な理由を考察した結果、少なくとも保存量の動的スペクトルに対しては振幅モードの寄与はありえない(臨界温度直下を除いて)ことがわかった。また、シングレット超伝導体においては、スピン自由度と結合させることも困難であることがわかる。今年度に明らかにしたように、ギャップの振動数依存や粒子-ホール対称性の破れを通して、原理的には振幅モードは外場と結合しうるので、これを保存しない物理量(たとえば軌道自由度)を通して観測することによって、振幅モードを直接観測する可能性があると考えられる。 2.位相スリップを抑制した場合の準1次元ハードコアボース系の超流動密度に関する研究結果を国際会議(International Symposium on Quantum Fluids and Solids, Tokyo, July 25-31)において発表した。
|