研究課題/領域番号 |
15K05184
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
桑原 英樹 上智大学, 理工学部, 教授 (90306986)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マルチフェロイック物質 / 誘電体 / スピン / 電気分極ドメイン / 酸化物 / 相転移 / 磁場 / 電気磁気効果 |
研究実績の概要 |
本年度は室温マルチフェロイック物質BiFeO3結晶の電気分極の磁場角度依存性測定を中心に行った。使用したBiFeO3結晶はLD-FZ法によって作成された単結晶試料である。この試料を用い、c軸に垂直なXY平面に存在するスピン由来の電気分極ドメインの磁場印加方位依存性を精密に測定した。BiFeO3では3つの等価なサイクロイド型反強磁性伝播ベクトルQをもつ磁気ドメインが存在すると予想されており、各ドメイン内でc軸及びQベクトルと垂直なXY平面内に電気分極Pが発現すると考えられている。 今回の実験ではQ2ドメインと同方向を0°と定義し、印加磁場角度を0°~180°の範囲で10°毎に変化させ、y軸方向の電気分極Pyを精密に観測した。強誘電相転移及び反強磁性相転移温度が室温以上であることより、電気分極および磁気ドメインを完全に初期化(リセット)できないため、各印加磁場角度依存性測定の間にリセット印加磁場角として90°の測定を挟むことで、Q2ドメインを安定化させてから各印加磁場角におけるPy測定を行った。 その結果、印加磁場角度xを変化させることで、Pyを周期的に制御することに成功した。Pyはcos2xに比例し180°周期の印加磁場角度依存性を示したが、Pyが負の最大値を示すと予想された90°付近で、Pyは予想した値より小さな変化しか示さなかった。その理由として、毎回90°でリセットを行っていたためQ2ドメインが安定化し、90°からの小さな角度変化ではQ2ドメインが他のQ1,Q3ドメインへと変化することがなかったためと考えられる。 来年度は印加磁場角度を広げた180°~360°の範囲での測定、リセット角を90°以外の方向にした時の測定、さらにPxに関しても上記Pyと同様の測定を行い、BiFeO3のc軸に垂直な電気分極ドメインの理解、及びその回転磁場制御を進展させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた年次計画に沿っておおむね順調に計画通り進展している。年次計画での中心テーマと並列に行った新規物質系への展開テーマも、順調に進捗しており、2年目、最終年度に向けてその成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の研究計画に沿って順調に研究が進展しているので、大きな研究計画の変更は行わず、2年目、最終年度とさらに研究を展開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費を必要最小限のものにとどめ、また比較的安価なものを購入し支出を切り詰めたため。
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次年度使用額の使用計画 |
大きな使用計画の変更はなく、試料作製のための物品費に当てる。
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備考 |
上記URLに研究成果として発表した論文へのリンクや研究内容の紹介がある
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