研究課題
本年度は昨年度に引き続き室温マルチフェロイック物質BiFeO3結晶の電気分極の磁場角度依存性測定を中心に行った。この試料を用い、c軸に垂直なXY平面に存在するスピン由来の電気分極ドメインの磁場印加方位依存性を精密に測定した。BiFeO3では3つの等価なサイクロイド型反強磁性伝播ベクトルQを持つ磁気ドメインが存在すると予想されており、各ドメイン内でc軸及びQベクトルと垂直なXY平面内に電気分極Pが発現すると考えられている。今回の実験ではXY平面内で[100]方向を0と定義し、印加磁場角度を0~2πの範囲でπ/18毎に変化させ、y軸方向の電気分極Pyを精密に観測した。強誘電相転移及び反強磁性相転移温度が室温以上であることより、電気分極および磁気ドメインを完全に初期化(リセット)できないため、各印加磁場角度依存性測定の間にリセット印加磁場角としてπ/2の測定を挟むことで、Q2ドメインを安定化させてから各印加磁場角におけるPy測定を行った。 その結果、印加磁場角度xを変化させることで、Pyを周期的に制御することに成功した。Pyはcos2xに比例しπ周期の印加磁場角度依存性を示したが、Pyが負の最大値を示すと予想されたπ/3~2π/3, 4π/3~5π/3付近で、Pyは予想した値より小さな変化しか示さなかった。その理由として、毎回π/2でリセットを行っていたため測定前にQ2ドメインが安定化し、π/2からの小さな角度変化では測定時の変化が小さくなっていることに起因していると考えられる。さらに上記BiFeO3試料の実験と平行して、さらに回転磁場下での電気分極制御を行なう新規物質群として、層状コバルト・マルチフェロイック物質A2CoM2O7(A=Ca,Sr,Ba, M=Si,Ge)結晶および新規マルチフェロイック物質CaBaCo4O7結晶に関して基礎データを測定した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた年次計画に沿っておおむね順調に計画通り進展している。年次計画での中心テーマと並列に行った新規物質系への展開テーマもおおむね順調に進行しており、最終年度に向けて研究をまとめる予定である。
おおむね当初の研究計画に沿って順調に研究が進展しているので、大きな研究計画の変更は行わず最終年度に向けてさらに研究を展開していく。
予定していた装置メンテナンスを延期したため。
延期した装置メンテナンスを行う以外、大きな使用計画の変更は無い。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 85 ページ: 094717-1~6
10.7566/JPSJ.85.094717
Hyperfine Interactions
巻: 237 ページ: 116-1~7
10.1007/s10751-016-1329-y