研究実績の概要 |
最終年度となる本年度は、昨年度までの室温マルチフェロイック物質BiFeO3結晶の電気分極の磁場角度依存性測定結果を基に、さらに他の物質系へと展開を試みた。具体的には層状コバルト・マルチフェロイック物質A2CoM2O7(A=Ca,Sr,Ba, M=Si,Ge)結晶および新規マルチフェロイック物質CaBaM'4O7(M'=Co, Fe)結晶に関して回転磁場による電気分極ドメイン測定の前段階としてこれら物質群の基礎データを測定した。 BiFeO3結晶では回転磁場によって電気分極ドメインの制御に成功したが、残念ながら新規物質群に関しては電気分極の詳細な磁場角度依存性測定までは至らなかった。しかしCaBaCo4O7結晶の電気磁気効果の極性依存性、すなわちc軸方向に自発電気分極を持つ本極性結晶(空間群Pbn21)の±c軸の2方向での非相反電気磁気応答を詳細に調べ、以下の重要な知見を得ることができた。 CaBaCo4O7単結晶の磁化容易軸である磁場Hb及び、電場Ecを印加した下で、その電場・磁場配置は同じとし、結晶極性(結晶c軸方向)のみを変化させた時の磁化Mbの電場Ec依存性を測定した。その結果、結晶極性の違いによって磁化の電場依存性が異なる傾きを持つことが明らかとなった。つまり室温以上で既に結晶が持っている電気分極の方向(結晶極性)を反映して線形の電気磁気効果における電気磁気感受率テンソルの成分α32(Mb=α32Ec)の符号が反転する結果が得られた。層状コバルト・マルチフェロイック物質A2CoM2O7(A=Ca,Sr,Ba, M=Si,Ge)結晶に関しても同様の実験を行い研究を広く展開していく。
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