研究課題
本研究は圧電素子を用いて試料に一軸応力を印加した状態で走査トンネル顕微鏡観察を行い、その状態変化の観察を行うことを目的としている。昨年度までに、積層型の圧電素子を用いて、室温および液体ヘリウム温度の低温で応力印加の元で試料観察ができるようなセッティング方法を開発した。本年度はこの装置を用いて、いくつかの試料について一軸応力のもとでの試料表面の観察を行った。一つは、遷移金属ダイカルコゲナイド1T-TaS2のTaの一部をFeに置換したものを用いた。これまでの我々の研究により、Fe置換した1T-TaS2においては、境界で電荷密度波の位相が急激に変化する不規則な形の分域構造が発生することが分かっている。この分域構造の観察を応力のもとで行った。その結果、圧電素子の変位によるSTM像の変位は観察することができたが、分域構造自体に大きな変化を見るには至らなかった。これは準安定あると考えていた分域が、Feによるピン止めを受けており、比較的安定状態になっていたためと考えられる。また、Fe置換を行っていない1T-TaS2において室温近くで存在する分域構造の応力下での測定も行った。しかしながらこの分域構造に関しても大きな変化を得るには至らなかった。これらの結果は、使用した圧電素子による変位が大きく変化を起こすには不十分であるためと考えられる。以上の結果を踏まえて、現在、圧電素子、または別の機構を用いたより大きな変位を得られる装置を作成中である。以上の結果は日本物理学会で発表を行った。
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JOURNAL OF THE PHYSICAL SOCIETY OF JAPAN
巻: 87 ページ: 113703
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