研究実績の概要 |
2種類の物質開発を行った。一つはRe6+の酸化物であるSr7Re4O19で、純良試料の合成に成功し、208 Kで磁化率の急激な減少と電気抵抗の変化を伴った新奇な相転移を見出した。その構造は、ReO6八面体が頂点酸素を共有して作るジグザグ鎖が頂点酸素を共有して連結し4本鎖(ジグザグ鎖2本よりなる梯子鎖)を形成していて、擬1次元構造とも言える。208 Kで構造も単斜晶から三斜晶に変化し、低温相ではジグザグ鎖に沿ってRe-Re距離に短長の交替が起きていることも見出した。構造や物性の転移点での変化は連続的で緩やかであり、相転移は2次の相転移である。擬1次元的構造、金属(半導体)-絶縁体転移、スピン・シングレット基底状態、結合交替等を考慮するとSr7Re4O19の相転移はパイエルス転移あるいは電荷密度波転移の可能性が高い。もう一つは酸水素化物CaVO3-xHxで、CaVO3からZr金属箔を用いて強制的に酸素を取り除くことにより酸素空格子点が規則配列した物質CaVO3-δ (δ = 0.14, 0.2)を合成し、それと水素ガスを石英管に封じて加熱することによりヒドリド陰イオン(H-)が1次元鎖状に並んだ酸水素化物の合成に挑んだ。水素の核磁気共鳴測定において強度は弱いが明確なシグナルを観測し、水素がヒドリド陰イオンとして存在することを示した。これは ヒドリド陰イオンが1次元鎖状に並んだ酸水素化物の初めての合成例である。 他には、圧力誘起超伝導を示すβ-Na0.33V2O5において高圧・高磁場下で超伝導特性を調べ、電荷揺らぎ媒介の超伝導の可能性を示した。また、同じく電荷秩序型金属-絶縁体を示すβ-Sr0.33V2O5においては、0.9 GPa近傍で、単斜晶のb軸方向に3, 5, 7, 11, 13倍の電荷変調型超周期構造を持った相が次々現れる“悪魔の花”逐次相転移を見出した。
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