軌道ネマチックとは、軌道の自由度を用いて電子系のxy対称性のみを破った新規な量子状態であり、鉄系超伝導体で実現している可能性が大きく注目されている。本研究では、軌道ネマチックとスピン揺らぎが共存しているという、より現実的な観点から鉄系超伝導体の高温超伝導機構を追求した。その結果、両者は互いに競合関係にあることが分かった。スピン揺らぎは超伝導不安定性に対する自己抑制効果を持ち、高い超伝導転移温度は軌道ネマチック揺らぎによって実現され得る、という知見が得られた。超伝導ギャップは、ほぼ等方的であり、ネマチック相で超伝導転移した際には電子面に顕著な波数依存性が生じることが分かった。
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