研究課題/領域番号 |
15K05190
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
辻井 直人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (90354365)
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研究分担者 |
山岡 人志 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 専任研究員 (30239850)
櫻井 裕也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点強相関物質グループ, 主任研究員 (60421400)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 価数揺動 / 希土類化合物 / ラットリング / 格子 / 熱伝導 |
研究実績の概要 |
希土類イオンの価数揺動と、ランダムな熱振動(ラットリング)の相関を解明するための研究を引き続き行っている。La3Pd20X6およびCe3Pd20X6 (X = Si, Ge)の中性子回折結果について、リートベルト解析を行い、全サイトの熱振動パラメーターの温度依存性を調べた。その結果、2種類の希土類サイトのうち、より大きなカゴ構造を有するLa1, Ce1サイトにおいて大きな熱振動が観測され、予想と一致した。詳細な物性測定の結果、室温での格子熱伝導に関して、予想に反して熱振動パラメーターとは逆の傾向が観測された。この原因は現在考察中である。一方、低温での熱伝導に関しては、Ce系で非常に強い抑制効果が観測された。同様の現象は、近藤半導体CeRhSbなどでも報告されており、フォノンのKondo scatteringによるものであると考えられる。このように、メカニズムは異なるが、価数揺動と格子振動の強い相関が観測されるという興味深い結果を得た。現在、論文作成の準備中である。 カゴ状構造と希土類の価数揺動に関連して、スクッテルダイトYbxCo4Sb12(x = 0.1~0.2)の単結晶作成に成功した。この物質のYb価数を放射光X線分光によって調べたところ、Ybは弱い価数揺動を示し、温度・圧力に対して安定であることがわかった。さらに、YbCu5における価数揺動が、圧力によって増大するという新現象が見出された。この論文がScientific Reportsから出版された。また、Yb-Cu二元系化合物において、YbCuやYbCu2で強い価数揺動と、価数の強い圧力効果が観測された。これは価数揺動と格子との強い相関を示唆しており、より詳細な研究を進めている。一方、d電子系のスピン揺動に関してFe(Si,Ge)の物性に関する論文がJ. Phys. Conf. Seri.から出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
希土類イオンを含んだカゴ状構造を持つ化合物について、カゴの大きさに依存した顕著な熱振動が観測され、予想した結果を得た。一方、室温における熱伝導との相関に関しては予想とは逆の傾向が観測されており、未解決の部分も残されている。さらに、低温の熱伝導に関しては、予想とは異なるメカニズムではあるが、価数揺動によるフォノンの散乱による熱伝導率の減衰が観測され、興味深い結果を得た。現在、論文作成を進めており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
La3Pd20X6, Ce3Pd20X6等の結果に関しては、ほぼデータが揃った状態であり、論文投稿、国際会議発表などを行って成果の公開に務める。一方、YbCu化合物では、すでに発表したYbCu5のほかに、新たに調べたYb系でも興味深い価数揺動の圧力変化が観測されたが、一部のデータの再現性に検討が必要であることがわかった。これは試料の質に問題があったためであると思われる。現在、良質の試料作成を行っており、この試料を用いた再測定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文発表や学会発表のための出張を予定していたが、実験データに再検討が必要な部分があることが判明し、一部の出張を取りやめたため、次年度使用額が発生した。また、試料の再作成や測定データの再現性を得る実験を行うため、期間延長を申請した。次年度使用額は、これらの再現性を確認する実験のための費用と、その成果発表のために使用したい。
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