研究課題/領域番号 |
15K05194
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山岡 人志 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 専任研究員 (30239850)
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研究分担者 |
佐藤 仁 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (90243550)
水木 純一郎 関西学院大学, 理工学部, 教授 (90354977)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鉄系超電導 / 高圧 / X線回折 / X線発光分光 |
研究実績の概要 |
本研究は、放射光の先端計測技術のX線回折・散乱法(XRD)と分光法(XES)の高度化と複合利用により、これまで極低温・高圧下での電子状態の直接観測を行い、鉄系の非BCS超伝導体が示す新規超電導機構の解明を目的としている。圧力は超電導状態に大きな影響を与える。最近、加圧により、最初の超電導相がいったん消失したあと、別の起源をもつを考えられる新たな超電導相が、KxFe2-ySe2、や ammoniated FeSeなどで報告されている。また、組成を変えることによっても、同様の第2の超電導相が、LnFeAsO1-xHxでも見出されている。 特に、電子状態に関しては、高圧下では、光電子分光などの有力な手法が適用できないため、ここで行う発光分光測定が重要な測定手段となる。われわれは、Fe Kbeta XESをベースとした手法により、高分解能の吸収スペクトルから混成の度合いを、また、XESスペクトルからスピン状態の調べる手法を発展させてきた。電子構造と同時に結晶構造も重要な情報となる。我々は、同じ試料に対して、同時に高圧下での結晶構造をXRDにより調べている。 2016年度は、KxFe2-ySe系のXRDとXESの実験結果の解析を行い、最初の超電導相と次の超電導相の起源が違うことを新たに見出した。現在、この結果は、論文として投稿中であある。また、LaFeAsO1-xHxとammoniated FeSe、そして、Ba1-xKxFe2As2, Ba(Fe1-xCox)2As2などのBa122系に対するXRDやXESの実験も新たに行うことができた。LaFeAsO1-xHx、ammoniated FeSeとBa122系に関しては、引き続き実験を行う予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は、KxFe2-ySe (Fe122*系)系のx-ray diffraction (XRD) とx-ray emission soectroscopy (XES) の実験結果 (SPring-8放射光を利用)の解析を行い、超電導状態の対称性に関して、最初の超電導相がd波、2番目の超電導相がs波であることを示唆する実験的な結果を新たに得ることができた。これは、Fe122系の理論計算とも一致する。第二の超電導機構の解明に対して、大きく前進したと言える。 さらに、LaFeAsO1-xHxとammoniated FeSe、そして、Ba1-xKxFe2As2, Ba(Fe1-xCox)2As2などのBa122系に対するXRDやXESの実験も新たに行うことがきた。LaFeAsO1-xHxは、組成xの変化によってふたつの超電導領域が見出されており、その起源が話題となっている。また、ammoniated FeSeも、圧力依存性において、最近、高圧側で二つ目の超電導相が見出されており、この起源の解明が待たれている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、前年度の成果に基づき、下記の放射光実験を予定している。 (i) SmFeAsO1-xHxに対する実験:LaFeAsO1-xHxに対する測定を前年度行った。これをさらに広げて、Sm系に対する高圧下での測定を新たに行う。試料は、東工大の細野研で用紙される予定になっている。 (ii) ammoniated FeSe系:岡山大の久保園研で作成された試料に対して初期的な実験を前年度行うことができた。現在、詳細な解析が進行中である。本年度はさらに、これを実験条件(温度や圧力)を変えながら調べていく予定にしている。 (iii) Ba1-xKxFe2As2, Ba(Fe1-xCox)2As2: BaFe2As2にホール、電子ドープされた試料であるが、組成依存性や圧力依存性に関して、系統的な実験はあまりない。Feサイトの電子状態が組成や圧力を変えても変化がないとう報告がある。しかし、圧力依存性に関しては、我々の結果は少し違っており、本年度は、これをさらに深めるための実験を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の佐藤の分を次年度に使用する。 当該年度の残りの額が使用するにはそれほど大きな金額ではなかったためと研究計画に変更が総じたため、より有効利用するために、次年度と合わせて、旅費、または、物品費として使用するため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度と次年度の金額を合わせて、旅費、または、物品費として、分担者の佐藤仁が使用する予定。
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