生体、生態系、経済・社会等の現実の複雑な系には、多様な要素が相互作用しあいながら新規要素の包摂と要素の消滅が繰り返されているという共通の特徴が見られる。本研究ではこのような「開放進化系」について研究代表者がある簡単な模型(EOSモデル)に基づいて最近発見した新しい頑健性決定機構について、その普遍性と現実問題への適用の妥当性を吟味することを目標とした。 初年度には理論の基になっている簡単な模型の拡張の端緒として、(A)既存要素がすでに持っている相互作用本数に比例して新規導入要素からの相互作用が結ばれる場合及び (B)新規導入種の持つ相互作用項の平均が従来の0からずれた場合 について解析を行い、2年目には(C)「系のサイズを固定したモデル」と(D)「相互作用の結合に双方向性を持たせたモデル」について主に取り組んだ。引き続く3年目にはまず(D)の研究の仕上げに取り組み、共同研究者と共に解析の緻密化と査読結果を受けての論文の改訂を進め、学術論文誌にオープンアクセス論文として出版した。また、本研究において追求してきた「モデル相互作用の現実との比較」の問題意識から、「集団での追跡・逃走」についての理論研究も行い、捕食者側に分業的に「怠け」を入れた場合に捕食者全体の効率が上がることとその原因についての解析結果を論文にまとめ学術論文誌にオープンアクセスの論文として出版することができた。 一方で、これらの主要成果の発表を予定し実際に口頭発表として採択されていた国際学会への参加については、他業務の都合で取りやめざるを得なかった。このため、この次年度へ繰越してより適した国際学会での発表を行うこととした。以上のような経緯をうけて本年度には、改めて選定し採択された国際会議(CCS2019)において講演を行い成果の周知をした。また、より広い対象に向けた解説記事をまとめ、生物物理誌に寄稿することができた。
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